『アルスラーン戦記』あらすじ・ネタバレ感想文|小説 「王都炎上~奪還」 第1部
- 小説『アルスラーン戦記』第1部 あらすじと感想
- 争乱の中心人物と簡単な時系列
- アトロパテネの会戦|カーラーンの裏切り
- ヒルメスの悲劇と復讐
- 王太子アルスラーンの魅力と出生の秘密
- 王都エクバターナ奪還|宝剣ルクナバード
ネタバレあります。ご注意ください。
壮大な歴史ファンタジー
田中芳樹さんの小説『アルスラーン戦記』感想文です。漫画、それを元にアニメ化もされた壮大なファンタジー。アニメも良かったけど小説はもっとすごかった。
全16巻中、第1部の 「王都炎上」 ~ 「王都奪還」 (1~7巻) までを読みました。
めちゃめちゃ面白い!田中芳樹さん天才?
16巻まであるから最初は怯んだけど、読み始めると止まらなくなりますね。案の定、ハマった次第です。
『アルスラーン戦記』あらすじ|王都炎上~奪還
戦記ファンタジー
猛勇なる騎士軍団を誇り、不敗の国王・アンドラゴラスが君臨するパルス王国。蛮族ルシタニアとの戦いでも、その勝利を疑う者はなかった。だが、味方の裏切りにより軍団は一日にして崩壊。王国は滅亡してしまう。生き残った王太子・アルスラーンは、勇者・ダリューンや、軍師・ナルサスらとともに故国奪還を目指す。壮大な歴史ファンタジー。
田中芳樹『アルスラーン戦記』とは
小説『アルスラーン戦記』は 16巻まである巨編・歴史ファンタジー。『銀河英雄伝説』でも有名な田中芳樹さんの小説です。
アトロパテネの会戦で王都エクバターナが炎上して、奪還するまでが一区切り。
王太子アルスラーンが仲間とともに戦いを繰り返し、王都を取り戻して国王になる・・・というのが7巻までのストーリーです。
そこまでには紆余曲折。ナルサスの策略やダリューンの猛者ぶりに胸が踊り、王家の争いに凄まじさを感じました。
『アルスラーン戦記』(1~7) 簡単な時系列・ネタバレ感想|王都炎上~奪還まで
7巻でもまだ途中ですが、王都奪還すると人心地つきますね。
まずは、第1部 争乱の中心人物と主な流れ、物語の始めとなったアトロパテネ会戦、悲劇の人物・ヒルメスの復讐についてです。
感想をまじえながら解説していくね。
王都エクバターナをめぐる争い|第1部 争乱の中心人物と主な流れ
パルス歴320年10月~321年9月上旬までが描かれた『アルスラーン戦記』第1部 (1~7巻)。争乱の中心人物は4人です。
- アンドラゴラス三世・・・現パルス国王、パルス正統の血筋
- アルスラーン・・・国王アンドラゴラスの息子で王太子
- ヒルメス・・・銀仮面の男、実はパルス正統の血筋
- ギスカール・・・ルシタニア国王イノケンティス七世の弟
主人公・王太子アルスラーンは、アトロパテネの会戦のときわずか14歳。生き延びて仲間たちとともに戦いの中で成長していきます。
アンドラゴラス (パルス軍)vsギスカール&ヒルメス (ルシタニア軍) → ルシタニアの勝利
アンドラゴラス (パルス軍)vsギスカール (ルシタニア軍) → アンドラゴラスの勝利
アンドラゴラスvsヒルメスvsアルスラーン
王太子アルスラーン、王都エクバターナ奪還&国王に即位
※ ものすごく簡単な時系列。王都以外の流れは省略しています。詳しい時系列・年表は以下の記事をどうぞ。ネタバレあり。
いろいろあったけど、王都が奪われてから奪還までは約1年の出来事なんだね。
大きくみると、最初はパルス軍 VS ルシタニア軍ですが、最後はパルス軍 VS パルス軍 VS パルス軍となるのが皮肉。
・・・王家血筋の争いですか (実は違うけど)。
アトロパテネの会戦|カーラーンの裏切り
『アルスラーン戦記』第1巻は アトロパテネの会戦より幕を開けます。
このとき主人公の王太子アルスラーンはわずか14歳での初陣でした。万騎長で 「戦士のなかの戦士」 という異称を持つダリューンも登場します。
パルス軍はルシタニア軍に惨敗。信頼をよせていた部下の裏切りがあったのです。
裏切ったのは、万騎長カーラーン。
カーラーンの裏切りがなければ、パルス軍は負けることはなかったかも・・・。
カーラーンと剣をまじえるダリューン。2人ともカッコイイ。
カーラーンも好きな登場人物の一人です。アニメではダリューンと相見えるシーンがカッコよく描かれていて、小説を読むとそのシーンがよみがえりました。
『アルスラーン戦記』は魅力的な登場人物が多いんだ。
銀仮面卿ヒルメスの悲劇と復讐
銀仮面卿・ヒルメスも好きです。
アトロパテネの会戦でルシタニア軍とともにパルス軍を敗退に追い込んだ人物。実はパルス王家の血筋をひいているんですよね。
先王オスロエスの嫡子で、きさまの甥だ。そして、パルスのまことの国王だ!
アンドラゴラスの甥。これにはびっくりしました。後半、さらに衝撃的な真実が明かされることになります。
ヒルメスが銀仮面をつけているのは、自分の正体と顔の半分を占める火傷の痕を隠すため。
火傷はかつてヒルメスを亡きものにしようとしたアンドラゴラスに負わされた傷でした。王家をめぐる争いです。
ヒルメスが復讐したくなる気持ちもわかる・・・。
王太子アルスラーンからするとヒルメスは敵だけど、どうしても嫌いになれないんだよね。
サハルード平原の会戦後に横から王都エクバターナを奪還し、わずかな間ですがパルス国王として即位します。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」 ではないけど『平家物語』を連想して切なくなりました。
ヒルメスは過去の悲劇からパルス国王として即位するまでの間はとても長く、でもパルス国王だった期間は一瞬・・・。
やるせなくなりますね。
王太子アルスラーンの魅力と出生の秘密
主人公のアルスラーンが不思議な魅力を持った少年でした。
最初、アトロパテネの会戦でのアルスラーンは ひ弱な少年というイメージだった。
でも万騎長ダリューンや、軍師ナルサスをはじめ、ファランギース、ギーヴ、エラムたちと行動をともにするうちに成長していく。
結局、パルス王家の正統な血筋はひいていなかったわけだけど、なるべくしてなったという印象です。
不思議な魅力を持つアルスラーン|後の解放王
王太子アルスラーンの1番の魅力は、出会う人たちが彼を助けたくなってしまうこと。
「殿下も不思議な方だ。おぬしとおれとギーヴと、それぞれ気性をもちがえば考えもちがう者たちに、忠誠心を持たせてしまう」
これはナルサスの言葉だけど、忠誠心を持ってしまう魅力がアルスラーンにはあるんだ。
生まれてから幼少期を王宮の外で過ごしたアルスラーン。彼は従者を見下したりすることも、変な奢りもありません。
周りの人みんなに優しい。でも時には厳しい判断もしっかりできる人。
アンドラゴラス国王や、ヒルメス、パルス軍のギスカールなどと比べると、その異質さが目立ちました。
奴隷を解放するというのを掲げたのも異例中の異例。そのことからアルスラーンは解放王と呼ばれることになるんですね。
アルスラーン 出生の秘密
『アルスラーン戦記』第1部では 王太子アルスラーンの出生も大きくストーリーに盛り込まれています。
国王アンドラゴラスにも、王妃タハミーネにも似ていない王太子。
アルスラーンはいったい、何者なんだろう。
ダリューンの叔父・大将軍ヴァフリーズや、万騎長バフマンは事情を知っていたけど、アルスラーンに告げることなくこの世を去りました。
現実とは何だろう。父王の態度には温かみがなく、冷厳そのものである。自分は子として父に愛されていない。母にも。
自分はいったい誰なのか?
悩みとともに成長していくわずか14歳の少年。彼の出生が明らかになるのはだいぶ先の7巻です。
読みながら薄々血の繋がりはないんじゃないかと思ってたけど、そのとおりでした。真実は最後に王妃タハミーネから語られます。
アルスラーンもそれとなく気づいていたから、スッキリしたというところかな。
彼にはダリューンやナルサス、それに今まで戦って助けた人々、歩いてきた道があります。それがしっかり分かっていて強いなと思いました。
号泣!王都エクバターナ奪還|宝剣ルクナバードと英雄王カイ・ホスロー
アルスラーンは自分が成すべきことを悟ります。王都エクバターナ奪還のために宝剣ルクナバードを手に入れること。
王家の血筋ではないから、宝剣ルクナバードを手にして国民に示そうとしたんだね。
デマヴァント山でアルスラーンが宝剣ルクナバードに選ばれたとき、ダリューンの言ったひとことに号泣しました。
「われらが国王よ」
アルスラーンの周りに跪く仲間たち。改めて仲間の心がひとつになった瞬間です。
宝剣ルクナバードに選ばれたんだから、アルスラーンは立派なパルス国王だよ。
そして歴史は動きます。パルス暦321年8月下旬、アンドラゴラス三世、死す。
北の塔がターヤミーナイリと呼ばれることになった事件は思わぬ衝撃の展開でした。
『アルスラーン戦記』第1部 解説・感想まとめ
『アルスラーン戦記』第1部の感想をまじえながら簡単に解説しました。
- 争乱の中心人物と主な流れ
- アトロパテネの会戦
- ヒルメスの悲劇と復讐
- 王太子アルスラーンの魅力と出生の秘密と王都奪還