『ノエル』あらすじ・ネタバレ感想文|つながる物語|道尾秀介
- 『ノエル』あらすじと感想文
- 道尾さんが描く童話の世界
- 生きる意味
- 繋がる心地よさ
大事なのは、いま私がこうしていられること―
道尾秀介さんの小説『ノエル』感想です。表紙が藤城清治さんの影絵で思わず手にとりました。繊細でキレイですね。
小説の雰囲気にマッチしてる。
『ノエル』あらすじ
3人が紡いだ自分だけの物語
登場人物3人が奏でた自分だけの物語。連作短編集。
『ノエル』ネタバレ感想文
『ノエル』は3編+エピローグの構成です。
短編!?と思いきや、全部つながった物語でした。連作短編集ですね。ダークさはなく、最後は心が温まり感動します。
良いお話だった。
道尾さんが描く童話の世界
『ノエル』にはいくつもの短編童話が出てきます。登場人物に絵本作家がいて、その作家が描いた物語として埋め込まれていました。・・・それがまた良いんですよね。
お気に入りは、サンタのエピソード。
サンタが配るもの・・・幸せ、愛、驚き、喜び、思い出と呼ぶものです。素敵なプレゼントですよね。心がホワホワしました。
『ノエル』も道尾サンタからの素敵なプレゼント。
『ノエル』は、誰かが誰かを救う人の繋がりを描いた作品です。
確かに存在する生きる意味。誰かに影響を与えたり与えられたり・・・。そうやって人は生きていくのですね。
生きる意味とは
「物語の夕暮れ」の元教師は、自分の存在意義について深く追求する子供でした。歳をとり妻に先立たれ、生きる意味を見失ってしまう・・・。
人に大きな影響を与えて救うことができたなら、とても素晴らしいことです。でもできなかったとしても自分の人生は自分のもの。
落ち込むこともあるけど、楽しいことや嬉しいことを実感して歩んでいくことに生きる意味はあるんだね。
繋がる心地よさと人の軌跡
3つの物語は最後のエピローグで全て繋がり、心地が良かったです。道尾さんらしい引っ掛けや伏線も張りめぐらされていて、読んでは少し戻ったり・・・だったけど。
「物語の夕暮れ」元教師が見失っていたもの。確かにその教師が歩んできた軌跡があったのです。
それが分かったとき目頭が熱くなりました。さすがです、道尾さん。
文庫版の解説は、俳優の谷原章介さんが書いています。なぜ人間は物語を必要とするのかということが書かれていました。その辺りも興味深かったです。
素晴らしい物語に出会えたときや本からもらう感動の気持ちは、一度味わうとやめられませんよね。
本を読む人間で良かったと心底思ったよ。