『あるジーサンに線香を』(怪笑小説)あらすじ・ネタバレ感想文|東野圭吾
- 『あるジーサンに線香を』(怪笑小説より)あらすじと感想文
- 夢のような若返り
- 楽しい時間が終わる時
- 後に残ったもの
ネタバレあります。ご注意ください。
もしも、若返れるとしたら・・・?
東野圭吾さんの短編『あるジーサンに線香を』(怪笑小説より) 感想です。
『怪笑小説』は、ブラック・ユーモアな9編からなる短編集。
クスリと笑わずにはいられない物語集でした。その中の1話『あるジーサンに線香を』のレビューです。
面白かったよ。
『あるジーサンに線香を』あらすじ
東野圭吾さん、短編集!
新島先生に「若返りの実験」に協力して欲しいと頼まれたジーサン。実験は成功し、楽しい時を過ごす。でも幸せの時は長く続かなかった・・・。『あるジーサンに線香を』より。
『あるジーサンに線香を』ネタバレ感想文
『あるジーサンに線香を』は、心に響くものがある物語です。
楽しさ、切なさ、ほろ苦さ・・・。それらの気持ちを、主人公のお爺さん(ジーサン)を通して感じました。
ジーサンって、独特なタイトルだよね。
夢のような若返り
もしも、時を戻すことができたら?
誰でも飛びついてしまいそうな夢のような話・・・。
主人公は孤独なお爺さんです。20代のころは戦争の真っ只中。毎日が生きるか死ぬか瀬戸際の青春時代を送ってきた人でした。
そんな時代を生き抜いてきたお爺さんが実験により若返っていくのです。40代、さらには20代・・・。そして恋をして楽しい時を過ごす。
私がジーサンと同じ年齢になった時には、もっと便利な世の中になっているのかな。
楽しい時間が終わる時
楽しい時はいつまでも続かないものです。それは、たったの2ヶ月間でした。
後にあるのは老化。ジーサンはもとのお爺さんに戻っていきます。
一時でも楽しい時を過ごし、自分が知りえなかった世界を体験できたジーサン。戻る過程が切ないんですよね。
どんな楽しい時にも必ず終わりが訪れるものだけど、悲しい気持ちになる。
『あるジーサンに線香を』は、彼がつけている日記調で進んでいきます。気持ちが素直に表現されてクスリと笑ってしまう場面や、切なく心に響くものもあってジーンとしました。
後に残ったもの
逆戻りしてしまったジーサンが最後に思い描くものは死です。
実験をしない方が良かったのかと問われると分からなくなりました。でも私だったら、若返りを選んでしまうだろうな。たとえ2ヶ月間でも。
楽しい時を過ごした後では残酷だけどね。
『あるジーサンに線香を』切なくほろ苦く・・・
『あるジーサンに線香を』読後に感じた気持ちは、切なくほろ苦いものでした。
東野さんは『アルジャーノンに花束を』をモチーフにしてこの物語を書いたようですね。
楽しい時を過ごした後の残酷さという意味で、前に読んだ道尾秀介さんの『緑色のうさぎの話』を思い出しました。
目を閉じて、しばらくの間ボーッとお爺さんの気持ちを考えてみます。
ジーサンが死んだら、私がお線香をあげたい。