- 村上春樹さんの短編小説『鏡』あらすじと感想文
- 鏡の中にいる誰か
- 自由と不自由と矛盾
ネタバレあります。
鏡の中にいたのは―。
村上春樹さんの短編小説『鏡』感想です。短編集『カンガルー日和』の中の1つを読みました。どことなく怖さがある物語です。とても印象に残った1話。
『鏡』あらすじ・評価
「鏡」 の中のもう1人の自分
僕が1度だけ心の底から怖いと思ったことがある。高校を卒業して2年目の秋に、僕は中学校の夜警をやった。そこで見たものとは?
『鏡』読書感想文|教科書作品
鏡の前に立つと、当たり前ですが自分の姿が映りますよね。私が手を動かすと映っている私も同じく手を動かす。私のドッペルゲンガーみたいです。
鏡の中にはもう1つの世界があり、私とは違うもうひとりの私が存在しているのではないか。私は手を動かしていないのに、向こうの私が勝手に手を動かしたらどうしよう。
・・・などといった不安を感じることがあります。だから夜はあまり鏡を見れないんですよね。
鏡の中にいる誰か

この物語は日頃感じていることを読み取ったかのようなものになっていました。だから印象に残ったのかもしれません。
主人公は高校卒業とともに社会に出て働きます。
2年目の秋に中学校の夜警で怖い体験をするのです。夜の学校での見回り。そこで、あるものを見ます。
鏡に映った自分の姿です。
それのどこが怖いんだと言われそうですが、想像してみて下さい。夜の学校の見回りです。そこにはあるはずのないものがあり、自分の姿が映っているのです。
びっくりします。夜の学校ってだけでも十分に怖いのに。さらに主人公は奇妙なことに気付く。自分じゃない、もうひとりの自分です。
どっちが本物?

現実の彼と鏡の中の彼。もしも鏡の中には別の世界が広がっているのなら・・・。どっちが本物なのか分からなくなってしまう恐怖を感じました。
現実のはずの彼がもう1人の彼に支配されてしまうような焦り。私が思っていた不安が恐怖になった瞬間でした。
自由と不自由と矛盾
結末はあっさりとしたものでした。
「鏡」は、なかったのです。始めっから。
残るは謎ばかり。彼は鏡が1枚もない家で暮らすようになります。時間をかけて、やっとそれを見なくても髭を剃れるようになったそうです。
この作品を読むにあたって、時代背景を考えずにはいられません。60年代といえば学生運動が盛んになっていた頃です。
大学に進まず自由な生き方を選んだ主人公。でも怖い経験をして、結局、鏡のない不自由な生活をしています。髭を剃るのに慣れるのも時間がかかったように。
自由を手に入れたがために得た不自由な生活。
物語を通して描かれている矛盾です。人生は紙一重で、うまい具合にいかないものですね。何かを得れば何かを失う。ただの怖い物語だけではなく深いところをついています。
『カンガルー日和』十八編のショートストーリー
18編からなる『カンガルー日和』の中の1つでした。
佐々木マキさんの素敵な絵とともに展開されるショートストーリー。まだ全部読み終わっていないんです。それなのに感想を書いたのは、それだけ衝撃的なものだったからです。
「鏡の世界」で ドラえもんの鉄人兵団に出てくる「おざしきつりぼり」を思い出しました (笑) ←大好きなんです。
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私も愛用しているKindle端末はこちら→Kindle Paperwhiteレビュー・メリットとデメリット|読書が快適になるアイテム



