『ホワイト・ステップ』(箱庭図書館) あらすじとネタバレ感想文|乙一
- 『箱庭図書館』より「ホワイト・ステップ」あらすじと感想文
- 文善寺町で交わる世界
- あり得たかもしれない現実
- 今ここに存在していること
- 『箱庭図書館』リンクする登場人物
少しだけネタバレあります。
平行世界かもしれない!?
乙一さんの短編小説『箱庭図書館』より「ホワイト・ステップ」あらすじと感想です。
平行世界(パラレルワールド)が描かれたお話。
「王国の旗」も好きだけど、「ホワイト・ステップ」も面白くて不思議でした。
どちらも良かったよ。
「ホワイト・ステップ」あらすじ
6つの物語
文善寺町に住んでいる近藤裕喜。引っ越してきたばかりの女子高生、渡辺ほのか。二人は雪面に奇妙な足跡を発見する。それが二人の不思議な出会いだった・・・。
「ホワイト・ステップ」ネタバレ感想文
『箱庭図書館』舞台は文善寺町です。
「ホワイト・ステップ」で描かれた不思議なこと。心が温まるストーリーでした。
平行世界が面白かった。
文善寺町で交わる世界
物語を紡ぐ町で出会った2人。住人の近藤裕喜と、最近引っ越してきた渡辺ほのかです。2人の出会いは、でも本来なら起こりえないことなんですよね。
誰もいないのに雪面に足跡だけが勝手に出現する。平行世界が描かれています。
これも不思議な街の魔法?
あり得たかもしれない現実
平行に進んでいく世界、パラレルワールドが不思議でした。
お互いの姿が見えないから、雪面に文字を書いて会話をします。もし雪が積もっていなければ 2人はお互いに気づかないままだったのかもしれません。
雪がつなぐ奇跡。こんな不思議に出会えるのなら、この街に住んでみたい。
裕喜は両方の世界に存在していました。気になりますよね、もう1人の自分。
でも、もう1人の自分の方が充実した人生を送っていたら?ちょっとイヤかも・・・。裕喜はそんな状況に陥ります。
こっちでは彼女もいなく、お正月も一人で過ごしていた。あっちでは結婚していて充実した日々を送っている。
彼にもあり得たかもしれない現実。どこかで誤って孤独な人生を歩んでいる自分・・・。
裕喜は向こうの自分に嫉妬するんです。でもこの出会いを通して大切なことに気づきました。
今ここに存在していること
- 裕喜の世界 (A) には、ほのかは存在していなかった。代わりに彼女の母が存在している
- ほのかの世界 (B) には、彼女の母は存在していない
次に会ったとき彼はそっと問いかけます。ジャンケンに勝ったか負けたか。その言葉には彼女の暗い過去が暗示されていました。
彼女たち母子は、どちらが買い物に出かけるかをジャンケンで決めました。どちらの世界でも母子はお互いに後悔して相手を思いやります。
別々の世界に生きる2人の橋渡しをする裕喜。そこがこのお話の良いところなんですよね。そして大切なことに気づきます。
自分が存在していることの意味について。
お正月を1人寂しく過ごす彼は、向こうの世界の結婚している自分を羨ましく思っていた。自分は貧乏くじをひいた・・・と。でもほのかと出会い、母子の橋渡しをしたことで自分の存在意義に気づく。こんな自分も悪くないと・・・。
彼のおかげで母娘は救われたのです。ここに存在する優しい心を持った裕喜だからこそ出来たこと。
「今自分が存在していること」は、確実に意味があることなんだ。
『箱庭図書館』リンクする登場人物
『箱庭図書館』の物語には、すべてにある人物がリンクしていました。山里潮音 (しおね) という女性です。
彼女がどこにでてくるか、それもこの本の醍醐味だよ。