『ターン』時と人3部作あらすじと感想文|ずっと君を待っている|北村薫
- 『ターン』あらすじと感想文
- 時間のループと残酷世界
- 君と僕
ループする時間
北村薫さんの小説『ターン』感想です。北村さんの『時と人』3部作の中のひとつ。「スキップ」に続き「ターン」を読みました。
おなじ時間を繰り返してしまう不思議なお話です。
「時間」がテーマの物語だよ。
『ターン』あらすじ
「時と人」3部作
事故にあった真希は、自宅の座椅子で目が覚めた。いつもと変わらない日常のはずだったが、どうやらこの世界には真希のほか誰もいないらしい・・・。
『ターン』ネタバレ感想文
『時と人』ということから「時間」がテーマになっている物語です。
あまり残酷な感じがしなくて良かった。
時間のループ
もしも 目が覚めたときに、昨日の私に戻っていたら?
時間というのは時として曖昧。短調な毎日をくり返していると、昨日と同じだ・・・と思うことがあります。
でもちゃんと時は流れていて、昨日とは違うことがわかっているから安心して明日を迎えることができるんですよね。
主人公・真希は事故により時間のループの中に取り残されてしまいます。
それは3時15分のことでした。どこにいても何をしていても、その時間になったら自分の家の座椅子に戻されるんです。そしてまた今日のくり返し・・・。
残酷だーと思いながらもワクワクが止まらない。
残酷なループ世界
北村さんが描くループ世界が残酷でした。
ループに陥った主人公がいる世界には誰もいないんです(後にもう1人存在することがわかるのだけど、今の時点では)。
そして何も記録ができません。紙に書いても3時15分になったら書いたものが消えて(白紙に戻って)しまいます。自分の記憶だけが頼り。
想像すると恐ろしい。
「時間」って目に見えないものだから、どんなことでも起こり得そうな気がします。リアルに私だったらどうするだろうと考えたくなりました。
君と僕|SFだけど恋愛小説
『ターン』はSFものだけど、恋愛小説のようにも感じました。
始めっから最後まで2人称で進んでいくんです。主人公が誰かと会話しているかのような不思議な感覚・・・。
「君」(主人公)と「僕」の2人称です。
「僕」の視点から描かれていて「君」への言葉が優しくて心が和みます。残酷な状況なのに、そこまで重く感じないのは彼の存在があるからかもしれません。
真希は独りのはずなのに?・・・と疑問に思ったけど、面白くてあまり気にはなりませんでした。
最後に謎は解けるよ。
ずっと声の主を信じていた彼女と、ずっと待っていた彼。
150日を過ぎたころ、とつぜん電話が鳴ります。それは現実世界からの電話でした。電話の相手は泉洋平。
不安な状況は変わらないけど、そのやり取りが微笑ましかったです。
唯一の現実世界とのつながり。真希にとっては救いの電話だね。
『ターン』ホッとする結末
結末が好きです。ホッとしました。
前作「スキップ」は時の残酷さを感じるラストだったから今回も・・・と、不安だったのだけど。そうじゃなくてひと安心。
このラストで良かった。