『華竜の宮』あらすじ・ネタバレ感想文|人類滅亡の危機⁉多くの陸地が水没した世界|上田早夕里
- 『華竜の宮』あらすじと感想文
- 陸地の大半が水没した世界
- 外交官・青澄の心理戦
- 陸上民と海上民の共存
- プルームの冬|L計画とロケット
少しだけネタバレあります。
滅亡が迫る中、彼らに救いはあるのか?
上田早夕里さんの小説『華竜の宮』感想です。海洋SF小説。580ページほどで、文章が上下2段組になっていました。世界観が圧巻!!
オーシャンクロニクル・シリーズ本編です。
壮大な物語だったよ。これはハマる。
『華竜の宮』あらすじ
多くの陸地が水没した25世紀
25世紀、大多数の陸地が水没した世界―。そこで暮らす人々は、陸上民と海上民に別れて暮らしていた。外交官である青澄誠司は、彼らの対立の仲裁に奮闘していた。その頃、この星に試練が再びおこることが発覚し・・・。
『華竜の宮』ネタバレ感想文|オーシャンクロニクル・シリーズ本編
圧巻の世界観に息をのみました。これは面白い!!本作『華竜の宮』はオーシャンクロニクル・シリーズです。
リ・クリテイシャス(大規模海面上昇)により、多くの陸地が水没した未来地球が舞台の海洋SF小説。
短編『魚舟・獣舟』を先に読んでいたので、すんなり溶け込むことができました。
ここまで圧倒される世界観を描く上田さんに頭が下がります。作家さんてすごいですね。
圧巻!!陸地の大半が水没した世界
物語の舞台は25世紀。ホットプルームの上昇によって陸地の大半が水没した世界です。短編『魚舟・獣舟』の世界観が本作で長編として描かれていました。
陸で暮らす陸上民と海で暮らす海上民。海上民は子供を産むと必ず双子で生まれてきて、片方は人間で、もう片方は魚として生を受ける。
前作ではここの部分が面白くて不思議だったのですよね。・・・彼らは人間?
『華竜の宮』を読むと、どういう経緯でこういうことになったのかがわかるよ。
人類史上初めて全世界共通の生命操作技術の基準が作られました。人間に改変を加えて、水没した世界でも生きられるようにしたのが彼ら海上民です。
種を存続するためとは言え、すさまじい。
でも更なる環境異変が人々を襲います。その時、彼らは・・・。
外交官・青澄の心理戦
主人公は外交官である青澄誠司です。彼のパートナー・人工知性のマキの視点で描かれているのが新鮮でした。
『華竜の宮』は、外交官の青澄を軸に描かれる官僚たちとのネゴシエーション&心理戦に重きを置いています。
彼がまた魅力的な人物なんだ。
陸で暮らしながら海上民の生活を守ろうとする青澄。官僚たちの思惑が渦巻く中で、最後まで信念を貫き通す姿が頼もしかったです。
他にも素敵なキャラがたくさんいました。
海上民でオサを務めるツキソメや、海上民のために働くタイフォン。
タイフォン、カッコイイなと思っていたのだけど、ラストの展開にショックを受けました。
あぁ、これは悲しい。
陸上民と海上民の共存|排除される獣舟
『華竜の宮』は、生きるということについて深く書かれている小説です。
海上民の「朋」である魚舟と獣舟。獣舟は陸上民にとっては食料を食い荒らす厄介者・・・。それでも生きる権利はあるんですよね。
人類が生き延びるために人間に改変を加えた結果、海上民や魚舟が誕生しました。「朋」と出会えず陸を襲うようになった魚舟が獣舟です。
すべて人類がやったことの結果なんだ。
陸上民が安全に生きていくためには、やむを得ず獣舟を排除しなければならない・・・。共存って難しいですね。やり切れなさが後をひきました。
プルームの冬|新人類・ルーシィ&夢と希望をのせたロケット
人類は滅びる運命なのか。
『華竜の宮』最大のヤマ場は、陸地のほとんどが水没した世界に更なる追い討ちをかけるような環境異変。プルームの冬です。
プルームの冬に備えて人類が発案したのは2つでした。
L計画と、宇宙へ飛ばしたロケット。
L計画とは、種の存続のために考え出された海上民を改変するというものです。魚に近い形態のルーシィと呼ばれるものに・・・。期待の新人類・ルーシィです。
自然の摂理に反し、人を改変してまでも生きようとする人々に恐れを感じました。
「生きる」というのは生物の本能なんだ。
L計画と同時に、人類は宇宙にも夢と希望をたくします。生きていたあかしを残すために。・・・この気持ちはわかる気がしました。
自分が生きていた証みたいなものを残したいよね。
続編『深紅の碑文』について
『華竜の宮』の続編『深紅の碑文』も、水没した世界が舞台です。
『華竜の宮』を読んで、宇宙にいった人工知性の宇宙でのその後が気になりました。宇宙でのストーリーも、いずれ書いてくれないかな。