- 上田早夕里さんの小説『魚舟・獣舟』あらすじと感想
- テーマと本の目次
- 陸地の大半が水没した未来世界
- 「小鳥の墓」 レビュー
- 教育実験都市
少しだけネタバレあります
驚異の未来都市
上田早夕里さんの小説『魚舟・獣舟』感想です。6つの短編集。どれも面白かったです。
『魚舟・獣舟』あらすじ
上田早夕里が描く未来都市!!
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
現代社会崩壊後、陸地の大半が水没した未来世界。そこに存在する魚舟、獣舟と呼ばれる異形の生物と人類との関わりを衝撃的に描き、各界で絶賛を浴びた表題作。書下ろし中編を含む全6編を収録。
テーマと本の目次
異形コレクションということで、ホラー感が強かったです。世界観が抜群でした。
テーマは異形生物と人間。
表題作『魚舟・獣舟』をはじめ、6つの物語が楽しめます。
- 魚舟・獣舟
- くさびらの道
- 饗応
- 真珠の街
- ブルーグラス
- 小鳥の墓
「くさびらの道」 はホラー。幽霊がでてきます。「饗応」 はショートショート。人工知能、ちょっとシュール。「真珠の街」 もホラー。妖怪がでてきます。「ブルーグラス」 は海洋SF。恋愛もの?
表題作 「魚舟・獣舟」 と 「小鳥の墓」 が良かったです。ジャンルでいうとSF。「小鳥の墓」 は書き下ろしで180ページくらいの中編。そして 「魚舟・獣舟」。この2作品が好きです。
表題作 「魚舟・獣舟」 レビュー
“陸地の大半が水没した未来世界” という設定に心ひかれました。表題作 「魚舟・獣舟」 です。
陸地の大半が水没した未来世界
短編 「魚舟・獣舟」 は 長編『華竜の宮』に繋がっています。せっかくの世界観がもったいない気がしたので『華竜の宮』で長編として楽しめるから嬉しい。
陸地の大半が水没した世界で海上に暮らす一族。
ヒト型と魚の形で生まれてくる魚舟・獣舟がいました。
ヒト型は船で人として育てるけど、魚の形の片割れは海に放ち、過酷な環境を生きのびて戻ってくると 「魚舟」 になる。でもまれに 「獣舟」 になってしまう片割れもいて・・・。
魚舟だとか獣舟だとか異形の生物がでてきます。ギョっとしますが、その世界に引きこまれてしまうんです。
シュールな物語

海上の暮らしを捨てて陸上で暮らす男が主人公です。
現代社会が崩壊した未来で、海上民と陸上民に分かれて暮らす人々。「獣舟」 は海上民にとっては誰かの兄弟なわけだけど、陸上民にとっては陸の資源を食い荒らす厄介もの。やむ得ず排除していく・・・。
人も魚も生存するためにはその環境に適応していかなければなりません。最後の 「獣舟」 の適応能力にはゾッとしました。
「小鳥の墓」 レビュー
「小鳥の墓」 は 人殺しの男のお話でした。
教育実験都市
これだけで本書の半分以上を占める中編。火星に住む主人公の男・ジョエルが人殺しになるまでを描いた物語です。
教育実験都市 (EEシティ)
幼少時代から子どもの教育に優れた街で過ごしたジョエルは 頭が良くハンサムな男の子でした。
教育に特化した都市だけあって他人の大人でもみんな優しくて、犯罪などない平和なところです。でもそんな閉鎖的なところで暮らしていると息がつまる。
ジョエルがああなったのは 母親の面影を引きずってるのもあったのでしょうね。
教育実験都市なんてものを作った人間に愕然とします。ここは文字通りの実験都市だったわけで・・・。映画『メイズ・ランナー』を連想しました。
『火星ダーク・バラード』にジョエルが!?
「小鳥の墓」 も上田さんの長編に繋がっています。『火星ダーク・バラード』にジョエルが出てくるんです。
短編集で言うと『夢見る葦笛』の方がSF感がありますが、こちらも大満足の1冊でした。



