『銀河英雄伝説3 雌伏篇』あらすじ・ネタバレ感想文|イゼルローンvsガイエスブルク|田中芳樹
- 『銀河英雄伝説3 雌伏篇』あらすじと感想文
- イゼルローンvsガイエスブルク
- ユリアンの活躍とヤンの作戦
- メルカッツ提督の戦略
- ラインハルトの孤独
- 不穏なフェザーンの動向
ネタバレあります。ご注意ください。
私だったら、要塞に要塞をぶつけただろうね。
田中芳樹さんの小説『銀河英雄伝説3 雌伏篇』読書感想です。イゼルローン要塞vsガイエスブルク要塞が描かれた〈雌伏篇〉。
かなりの白熱戦だったよ。
前巻〈野望篇〉では、銀河帝国と自由惑星同盟それぞれの内乱(内輪もめ)が描かれていました。そしてラインハルトの大きな野望も・・・。
ラインハルトは大きなものを得たけど、結果、大切なものを失ったんだ。
『銀河英雄伝説3 雌伏篇』あらすじ
大河SF小説
亡き親友との銀河の覇者となる約束を果すべく決意を新たにしたラインハルトに、イゼルローン攻略のための大計が献じられた。その裏で暗躍する第三勢力フェザーンの狙いとは。一方、ユリアンの初陣からの帰還に安堵する間もなく、ヤンは査問会に召喚され、同盟首都に向かう。だがその隙を衝くようにイゼルローンの眼前に帝国軍要塞が出現。巨大要塞同士の戦いの火蓋が切られた。
『銀河英雄伝説3 雌伏篇』ネタバレ感想文
『銀河英雄伝説3 雌伏篇』では、要塞同士の戦いが描かれています。
イゼルローン要塞vsガイエスブルク要塞
メインはこの戦いで、同盟軍のユリアンが大活躍。ヤンを見て育った彼だから、これから第2のヤンになりそうとテンション上がりました。
キルヒアイスを失ったラインハルトの心の寂しさも描かれていて、切なくなります。
危うい感じもしたけど、ラインハルトの心の中には、今でもキルヒアイスがいるんだよね。
ちなみに〈雌伏篇〉の雌伏(しふく)とは、人に屈伏して従うこと。または、実力を養いながら活躍の機会をじっと待つことを意味しています。
実力を養って控えているキャラが際立っていたよ。
ユリアンのハレ姿には嬉しくなりましたが、帝国軍ロイエンタールの気持ちに危惧したりもしました。
いずれ世代交代するのかなという予感と、華々しく散る予感も抱きつつ・・・。田中芳樹さんの小説ですからね。
イゼルローンvsガイエスブルク
一番読み応えがあったのは、要塞どうしの戦いです。イゼルローン要塞を同盟軍に奪われた帝国軍は、新たな要塞を近くに移動させる計画を立てる。
ワープを駆使して移動させるのは「禿鷹の城」(ガイエスブルク)要塞です。
ガイエスブルク要塞はキルヒアイスが命を落としたところでもありますね。2巻の最後の方で描かれていたから、まだ記憶に新しい・・・。
今度は銀河帝国が攻撃を仕掛けます。司令官にケンプ大将、副司令官にミュラー大将が任命されました。
同盟軍の勝利だったけど、ケンプの最期や、生き残ったミュラーの気持ちを思うと胸が痛んだ。
しかもこの戦いは無用なものだったのではないか・・・と、話すミッターマイヤーとロイエンタールの会話を読んだから、なおさらです。
ラインハルトは、なぜこの戦いにゴーサインをだしたんだろう。
ラインハルトの戦略は部下が離れていってしまうのでは・・・と、危機感を感じました。
ユリアンの活躍と魔術師ヤンの作戦
ガイエスブルク要塞が現れたとき、イゼルローンにはヤンが不在でした。
彼が帰ってくるまで守り抜いたキャゼルヌやメルカッツにも頭が下がります。そしてユリアン少年も大活躍。
ひとえに、ヤンの作戦が成功したのはユリアンのおかげでもあるんだ。
ヤンだったらこうする・・・と、彼の考え方に沿って提案するユリアンは第2のヤンのようでした。
ヤンと仲間たちのおかげで、みごとに帝国軍を撃退。司令官ケンプは最後の手段にでます。
イゼルローン要塞にガイエスブルク要塞をぶつける。
まさに要塞vs要塞・・・。でもその作戦はヤンにはお見通しなんです。
私だったら、要塞に要塞をぶつけただろうね。どかんと一発、相撃ち。それでおしまいさ。なにもかもなくなったあとに、べつの要塞をはこんでくれば、それでいい
荒々しいけど、手っ取り早い作戦だ。
ラインハルトもそれを望んでいたようだけど、ケンプは気づくのが遅すぎました。ヤンはイゼルローンに向かってきたガイエスブルクを破壊。
・・・間に合って良かったです。
メルカッツ提督の戦略
前巻〈野望篇〉から、メルカッツ提督が気になっていました。
銀河帝国で内乱が起きたときに、やむなく貴族についた上級大将。内乱の末、副官シュナイダーとともに自由惑星同盟のヤンを頼って亡命します。
寡黙で実直な人柄の提督には好感が持てる。
メルカッツ提督の戦略は圧倒されるものがありました。彼がいたから、ヤンが戻るまでイゼルローン要塞は持ちこたえられたのです。
決して威張ったりせず、自分の立場をわきまえつつも鋭い戦略を繰り出すメルカッツがかっこいい。
『銀英伝』は魅力的な登場人物がたくさんいるね。
ラインハルトの孤独
銀河帝国宰相の地位を得て、キルヒアイスを失ったラインハルト。彼の孤独な心の内が描かれていて切なくなりました。
おれの周囲には、おれを理解しようとしない奴ばかり残る。それとも、やはり、おれ自身の罪か……
彼の周りには有能な部下たちがたくさんいます。でもキルヒアイスを失ったことで心を許せる人がいなくなっていました。
参謀のオーベルシュタインは、めちゃめちゃ切れる男だけど・・・。
ラインハルトもオーベルシュタインも、お互いを利用している関係です。ミッタマイヤーやロイエンタールも優秀だけど、彼を理解しているとは言い難く。
キルヒアイスの不在が残念でなりません・・・。
でも時おり、ラインハルトがキルヒアイスに問いかけるシーンがあって、ほっこりします。
彼の心には、いつもキルヒアイスがいるんだね。
不穏なフェザーンの動向とロイエンタール|今後が気になるラスト
表向きは銀河帝国vs自由惑星同盟、裏ではどちらにも属さないフェザーン、ルビンスキーの思惑がうごめいていました。
銀河帝国や自由惑星同盟に情報を流して、互いを争わせるように仕向けていたルビンスキー。・・・今後の展開が気になります。
ロイエンタールも野望が見え隠れして、ちょっぴり不安。彼もカッコよくて好きなキャラなんだけど・・・。
改めて〈雌伏篇〉に含まれる言葉の意味を考えました。
実力を養いながら活躍の機会をじっと待つこと。
ユリアンのことは応援したいけど、オーベルシュタインやロイエンタール、ルビンスキーに至っては野望が強すぎて不穏な予感がします。
活躍の機会を待つ人、多すぎ・・・。
別館ではアニメのレビューも書いてるよ。