『銀河英雄伝説2 野望篇』あらすじ・ネタバレ感想文|アルテナ会戦とアルテミスの首飾り|田中芳樹
- 『銀河英雄伝説2 野望篇』あらすじと感想文
- 内乱と時系列
- アルテナ会戦
- アルテミスの首飾り
- ヴェスターラント核攻撃
- 得たものと失ったもの
ネタバレあります。ご注意ください。
もうすぐだ、キルヒアイス。もうすぐ、宇宙はおれたちのものになる
田中芳樹さんの小説『銀河英雄伝説2 野望篇』読書感想です。前回に続き、読んだ「銀英伝」2巻目。最後は涙が止まりませんでした。
〈野望篇〉では、銀河帝国と自由惑星同盟の内乱が描かれています。
内輪もめですね。1巻目よりも争うシーンが多めで、ハラハラの展開。読むのを止められませんでした。
切なかったけど、面白かった。
『銀河英雄伝説2 野望篇』あらすじ
大河SF小説
自由惑星同盟でクーデターが勃発する。叛徒鎮圧の命令がヤンに下るが、首謀者は彼が信頼を寄せていた人物だった。一方、帝国でも、皇帝崩御以降激化する貴族間の権力闘争の渦中に身を置くラインハルトに、新たな試練が課されようとしていた。不敗の魔術師と常勝の天才、2人の英雄の決断が銀河史に新たな波瀾を呼ぶ。
『銀河英雄伝説2 野望篇』内乱の時系列とラインハルトの策略
宇宙歴797年の銀河帝国と自由惑星同盟は、内乱の年でした。ラインハルトとヤンは、望むと望まざるとにかかわらず、地位を確立していきます。
- 【銀河帝国】ラインハル卜・フォン・ローエングラム・・・宇宙艦隊司令長官、元帥に昇格。やがて帝国宰相へ
- 【自由惑星同盟】ヤン・ウェンリー・・・イゼルローン要塞の最高責任者、准将から上級大将に昇格
2人の英雄も気苦労が多いよね。
〈野望篇〉で起こった内乱を、それぞれ簡単にまとめました。
銀河帝国の内乱|ラインハルトvs大貴族
銀河帝国内では、ラインハルトと大貴族(ブラウンシュヴァイク&リッテンハイム)の紛争が勃発。
皇帝フリードリヒ4世が崩御し、孫にあたるエルウィン・ヨーゼフ2世が銀河帝国皇帝に即位しました。ラインハルトは、帝国宇宙艦隊司令長官の座に着きます。
ラインハルトに対抗するのは、ブラウンシュヴァイクとリッテンハイムを始めとする貴族たち。
- アルテナ会戦・・・ミッターマイヤーvsシュターデン
- キフォイザー星域の会戦・・・キルヒアイスvsリッテンハイム
- シャンタウ星域の会戦・・・ロイエンタールvsメルカッツ
- ヴェスターラントの惨劇・・・ブラウンシュヴァイク、ヴェスターラントに核攻撃
ラインハルトの部下、ミッターマイヤーとロイエンタールがカッコ良かったです。キルヒアイスも大活躍でした。
でも「ヴェスターラントの惨劇」は後味悪かった。
大貴族との戦いの末、帝国宰相の地位を得たラインハルトですが、同時に貴重なものを失いました。彼の行く末に不安を感じます。
自由惑星同盟の内乱|ヤンvsグリーンヒル大将
自由惑星同盟ではクーデターが勃発。ヤンはこれを制圧しようとしますが・・・。
- クーデター勃発
- ドーリア星域の会戦
- スタジアムの虐殺
- アルテミスの首飾りを攻撃
クーデターには、銀河帝国ラインハルトが一枚噛んでいるんだ。
銀河帝国内で戦っているとき、自由惑星同盟が攻撃を仕掛けてきたら困るから。・・・ラインハルトは自由惑星同盟でクーデターが起こるように仕向けたのです。
しかもクーデターのトップは、グリーンヒル大将。ヤンの副官フレデリカの父親でした。
ヤンはラインハルトの考えを予知していたけど、クーデターを未然に防ぐことはできなかったんだよね。
『銀河英雄伝説2 野望篇』ネタバレ感想文
『銀河英雄伝説2 野望篇』は、銀河帝国のラインハルトと自由惑星同盟のヤンの戦いはなかったけど、内輪もめは白熱でした。
ラインハルトの部下、ミッターマイヤー&ロイエンタールが素敵だった。
同時進行でアニメ(旧作の方)も見ていますが、ミッターマイヤーは金髪で爽やか。ロイエンタールは左右の瞳の色が違う金銀妖瞳(ヘテロクロミア)で二枚目キャラ。
彼らのコンビがまた良い感じなんですよね。
アルテナ会戦|ミッターマイヤーvsシュターデン
アルテナ会戦では、シュターデンに戦術論を教わったミッターマイヤーが師を追いつめます。
ミッターマイヤーvsシュターデン
シュターデンが率いるのは16000隻の艦隊。それに対してミッターマイヤーは14500隻。数は少ないけど、ミッターマイヤーの作戦勝ちでした。
敵の攻撃を防ぐだけで戦おうとしないミッターマイヤーを見て、疑心暗鬼にかられたシュターデン。
〝疾風ウォルフ〟と異名をとるほどに俊敏かつ剽悍なミッターマイヤーが、先鋒をうけたまわりながら、まもりを固めるだけで戦おうとしないのはどういうわけか
シュターデンは理論を優先させる傾向がある人でした。ミッターマイヤーはシュターデンの性格を熟知していて、これを逆手にとったのです。
さすが、ミッターマイヤー。最後は「疾風ウォルフ」の異名通りの活躍をみせるよ。
でも、シュターデンはレンテンベルク要塞に逃げ込んでしまったんですよね。ミッターマイヤーとロイエンタールも加わり、レンテンベルク要塞を落とすべく奮闘します。
かなりの犠牲を伴ったけど、みごとに制圧。・・・凄まじかった。
アルテミスの首飾り|自由惑星同盟ヤンの破壊作戦
自由惑星同盟で勃発したクーデターでは、ヤンの作戦により「アルテミスの首飾り」を破壊するシーンが面白かったです。
ヤンは、12個の氷の塊で同時に「アルテミスの首飾り」を破壊します。
300年前、銀河帝国から脱出した自由惑星同盟の父、ハイネセンに習っての作戦でした。歴史を勉強していたヤンだからこそ考えついたのかもしれませんね。
ヤンは「アルテミスの首飾り」を破壊するのに、一隻の戦艦も、ひとりの人命も犠牲にしなかったんだ。
ヤンの考え方や生き方、好きだよ。
本人は軍人を辞めたいと願っているけど、ヤンのような人にこそ上に立ってもらいたい。・・・そう願わずにいられませんでした。
ヴェスターラント核攻撃|すれ違うラインハルトとキルヒアイス
参謀オーベルシュタインの進言により、ラインハルトは道を外れてしまった気がして心配になるシーンがありました。
ヴェスターラント核攻撃。
ブラウンシュヴァイクが、民衆の暴動がおきているヴェスターラントに核攻撃を仕掛けます。それを知っていて止めなかったラインハルト。
オーベルシュタインの囁きが悪魔のように感じました。
「いっそ、血迷ったブラウンシュヴァイク公に、この残虐な攻撃を実行させるべきです」
このとき、キルヒアイスはいなかったんだ。彼がいれば、また違った結末になったかも・・・。
民衆を助けるよりも、銀河帝国を統治するための策略を優先したラインハルト。後にキルヒアイスの知るところとなり、2人の仲がギクシャクします。
「ジーク、弟と仲よくしてやってね」
アンネローゼの願い通り、キルヒアイスは姉弟の忠実な騎士となることを自分に誓っていました。それがここに来て揺らぐ・・・。
心がすれ違う2人を見ているのは辛かったです。オーベルシュタインが来てから、おかしな方向にいっているような気がしました。
ラインハルトの野望|得たものと失ったもの
『銀河英雄伝説2 野望篇』では、銀河帝国のラインハルトの野望が前面に出ていました。
「もうすぐだ、キルヒアイス。もうすぐ、宇宙はおれたちのものになる」
大きな野望・・・。
宇宙を手に入れるために、まずは、銀河帝国内の統治から始めるラインハルト。彼は貴族たちを抑えて、帝国宰相の地位に登りつめました。
でも大きなものを得たかわりに、代償として失うものもあったんだ・・・。
彼がもっとも信頼している人物・キルヒアイスです。
やはり田中芳樹さんの小説ですね。こうなることはわかっていたけど息が止まります。『アルスラーン戦記』を読んだときと同じことを感じました。
人はいつか生を終えるということ。そして、田中芳樹さんが描いているのは歴史。時は止まらず流れていて、活躍した人もいつかは伝説になる。
アンネローゼとキルヒアイスの愛は美しかったです。ラインハルトがアンネローゼに問いかけるところが印象に残りました。
「姉上はキルヒアイスを……愛していらしたのですか?」
美しく切ない愛のカタチ。
ラインハルトが仕組んだ内乱により、彼は大きなものを得て大切なものを失い、ヤンは味方が増えたけど背後の危険も増やすことになりました。
『銀河英雄伝説』まだ2巻目。相反する彼らによって、どう時代が変わるのか杞憂しつつ、これからも楽しみです。
別館ではアニメのレビューも書いてるよ。