『銀河英雄伝説1 黎明篇』あらすじ・ネタバレ感想文・解説|アスターテ会戦〜アムリッツァ会戦

- 『銀河英雄伝説1 黎明篇』あらすじと感想文
- 主要人物について
- アスターテ会戦
- イゼルローン要塞攻略
- アムリッツァ会戦
ネタバレあります。ご注意ください。
銀河帝国vs自由惑星同盟
田中芳樹さんの小説『銀河英雄伝説1 黎明篇』読書感想です。本編全10巻中の第1巻。壮大な大河SF小説でした。
ラインハルトや、キルヒアイス、そしてヤン・・・。登場人物が魅力にあふれていて楽しかったです。

ヤン・ウェンリーが好き。ラインハルトもかっこいい。
〈黎明〉には、夜明けや新しい事柄が始まろうとするという意味があります。まさに始まりの物語でした。
田中芳樹さんの小説を読むのは『アルスラーン戦記』に続き2作目。『アルスラーン戦記』めちゃめちゃ面白くてハマりました。



田中芳樹さんの小説は、物語に深く入り込めるのが良いね。
『銀河英雄伝説1 黎明篇』あらすじ
宇宙SF小説
銀河系に一大王朝を築きあげた帝国と、民主主義を掲げる自由惑星同盟が繰り広げる飽くなき闘争のなか、若き帝国の将“常勝の天才”ラインハルト・フォン・ローエングラムと、同盟が誇る不世出の軍略家“不敗の魔術師”ヤン・ウェンリーは相まみえた。この二人の智将の邂逅が、のちに銀河系の命運を大きく揺るがすことになる。
『銀河英雄伝説1 黎明篇』2人の英雄|ラインハルト&ヤン

『銀河英雄伝説1 黎明篇』は、簡単に言うと、2人の英雄を主軸に宇宙戦争をくり広げる壮大な物語です。

『銀河英雄伝説1 黎明篇』面白さは、キャラの人間関係とスペクタクルな宇宙戦争にあるよ。
登場人物が多くて混乱するけど、全員覚えなくても大丈夫。とりあえず主要人物だけ頭に入れておけば雰囲気で楽しめます。
銀河帝国のラインハルトと自由惑星同盟のヤンを中心に、壮大な宇宙戦争がくり広げられる。対立する2人が魅力あふれるキャラでした。
ドロドロの人間関係も気になりつつ、読むのを止められないんですよね。
ラインハルト&キルヒアイスの最強コンビ|銀河帝国
ラインハルト・フォン・ローエングラム。
元は貴族じゃなくて貧しい家庭の生まれ。姉・アンネローゼが皇帝フリードリヒ四世に見初められてから、彼の運命は変わりました。黄金色の髪と蒼氷色の瞳を持つ20歳の青年。

彼の腹心・キルヒアイスも人気あるんだ。
ジークフリード・キルヒアイス。ラインハルトの腹心で、彼が最も信頼を寄せる人物です。
ラインハルトとキルヒアイスが良いコンビ。部下に厳しいラインハルトが、キルヒアイスと2人でいるときは子どもっぽいところも見せて、ギャップがたまりません。

帝国軍の人間関係がドロドロ。
若く美男子で頭もキレる・・・とくれば、上の人に睨まれるのは仕方がないことかもしれませんね。
銀河帝国に限らず、自由惑星同盟でも人間関係にいろいろあって面白いんです。
ヤン・ウェンリー|自由惑星同盟 不敗の魔術師
ヤン・ウェンリー
自由惑星同盟軍第二艦隊の次席幕僚。黒い髪と黒い目を持つ29歳の青年です。軍人というよりは冷静な学者といった印象を与える人物。

エル・ファシルの英雄で不敗の魔術師・ヤン。
宇宙暦788年の「エル・ファシルの戦い」で、みごとに仲間を救ったヤンは、その功績が認められ、銀河帝国のラインハルトも知るところとなります。
ヤンの口ぐせは、「できることと、できないことがある」でした。冷静に「できることと、できないこと」を見極めて素早く指示を出すヤンがすごかったです。

彼の指示はいつも的確だった。
『銀河英雄伝説1 黎明篇』ネタバレ感想文|3つの宇宙戦争を解説
『銀河英雄伝説1 黎明篇』は、白熱の宇宙戦争が面白い!
もしかしたら女性よりも男性の方がハマるのかなと感じましたが、私はみごとにハマりました。
- 【アスターテ会戦】・・・帝国軍2万vs同盟軍4万
- 【イゼルローン要塞攻略】・・・同盟軍が帝国軍のイゼルローン要塞を占拠
- 【アムリッツァ会戦】・・・帝国軍と同盟軍の全面戦争
宇宙で繰り広げられる戦いは目を見張るものがありました。ミサイルやレーダーで攻撃して、滅びるのは一瞬なんですよね。

宇宙戦争はテンションあがるー。3つの宇宙戦争を詳しく解説してるよ。
アスターテ会戦|リング状の陣形

アスターテ会戦は〈黎明篇〉で一番最初に描かれている宇宙戦争です。リング状の陣形が印象に残りました。
帝国軍の艦隊約2万に対して、同盟軍の艦隊約4万→帝国軍の勝利。
数では圧倒的に同盟軍の方が有利なはずなのに、なぜ帝国軍が勝ったのか? 全てはラインハルトの戦略によるものでした。
わが軍は敵にたいし、兵力の集中と機動性の両点において優位にたっている
帝国軍は同盟軍よりも優位にたっている? ・・・どゆこと??

なるほどね。ラインハルトは鋭いな。
同盟軍もみすみす負けたわけではありません。ヤンが大活躍します。でも司令官ではなかった彼は歯がゆい思いも味わいました。
ヤンは、攻撃を受けている第4艦隊を助けに行っても間に合わないから、一刻も早く第6艦隊と合流した方が良いと助言をするのですが・・・。

彼の意見は聞き入れてもらえなかったんだよね。
結局、同盟軍は第4艦隊と第6艦隊を失うことに・・・。ここからヤンが大活躍します。負傷した司令官に変わり彼が指揮をとるのです。
ヤンの戦略にハマった瞬間、ラインハルトが悔しそうに叫んだのが意外でした。
「なんたるぶざまな陣形だ!」
同盟軍に背後を取られた帝国軍。帝国軍も同盟軍の背後につく、リング状の陣形になります。想像すると面白くて、この陣形が印象的でした。
帝国軍が勝ったけど、完璧な勝利とは言い難く・・・。ラインハルトとヤンを中心とする戦略に圧倒されました。
イゼルローン要塞攻略|ヤンの戦略と厄介な才能

第13艦隊の初代司令官に任命されたヤン。最初の任務は、帝国軍の軍事拠点イゼルローン要塞の攻略でした。
正面からは全く歯が立たない要塞でも、攻め方を変えただけであっさり落ちる。ヤンの目のつけどころが面白かったです。
要塞司令官と艦隊司令官は同格の大将である。そのあたりに、つけいる隙がありはしないか?
仲がよくない司令官たちの隙をつき、敵の主力と本拠地イゼルローンを分断して個別に攻略。

外からダメなら中から。・・・頭のまわる男だね。
帝国軍人の役をやったのはシェーンコップ大佐です。クセがありそうな人だけど、気になるキャラでした。
イゼルローン要塞の攻略に、ことごとく失敗してきた同盟軍。それをみごとにやり遂げたヤン、恐るべし。

智略に長けている彼は優しい人物。
イゼルローン要塞から主力部隊を攻撃している時も、これ以上の流血は無意味とし、帝国軍に逃げるように促したりもします。
攻略の後、ヤンの気持ちが表れている文章がありました。
「私は権力や武力を軽蔑しているわけではないのです。いや、じつは怖いのです。権力や武力を手にいれたとき、ほとんどの人間が醜く変わるという例を、私はいくつも知っています。そして自分は変わらないという自信をもてないのです」
活躍する一方で、軍人から退きたいと願っている彼の思いは切実です。でも願いは叶わず、望んでいないのに昇進していく。
才能は時として厄介なものですね。
アムリッツァ会戦|冷徹なラインハルトの戦略

イゼルローン要塞攻略が成功した勢いで、自由惑星同盟は、無謀にも銀河帝国に全面戦争を仕掛けます。ヤンも第13艦隊司令官として戦いに参加しました。
後にアムリッツァ会戦と名づけられるこの戦いは、仕掛けた同盟軍の敗退により決着。

ラインハルトの作戦勝ちだった。
ラインハルトは、被占領地の民衆を餓えさせることで同盟軍が物資を与えると予測。兵が飢えた頃に攻撃を仕掛ける気でいました。
物資も限りがあるから、尽きたときに同盟軍は民衆の反感を買う・・・。ラインハルトは、同盟軍と民衆の仲を裂くのにも成功したのです。
自分にはここまで徹底的にはやれない。やれば勝てるとわかっていてもやれないだろう。それがローエングラム伯と自分との差であり、自分が彼をおそれる理由でもあるのだ。―この差が、いつか重大な結果を招くことになるかもしれない……
徹底した策略に恐れをなすヤン。アムリッツァ会戦では、冷徹なラインハルトの一面が伺えました。
同盟軍の大半は負傷。でもヤン率いる第13艦隊の被害は、他の艦隊と比べてまだマシでした。

前線にいたのにね。
同盟軍に勝ったけど、ヤンを逃し、またもや悔しがるラインハルト。・・・アスターテ会戦の二の舞です。
彼をなだめるキルヒアイスをみて、この2人は良いコンビだと改めて思いました。
『銀河英雄伝説』宇宙戦争がクセになるほど面白い
『銀河英雄伝説』は、登場人物の人間関係や宇宙戦争シーンが魅力です。
宇宙戦争と言えば、先日読んだ中国のSF小説『三体Ⅱ 黒暗森林』を連想しました。作者・劉慈欣(りゅう じきん)さんは、『銀河英雄伝説』に影響を受けていたようですね。

ラインハルトやヤンの戦略にドキドキする感覚は『アルスラーン戦記』でも味わいました。軍師ナルサスの策略。爽快感はなかったけど、この感覚好きです。

ヒヤリとする宇宙戦争。・・・この面白さはクセになりそうだ。




別館ではアニメのレビューも書いてるよ。