『銀河英雄伝説4 策謀篇』あらすじ・ネタバレ感想文|神々の黄昏(ラグナロック)田中芳樹
- 『銀河英雄伝説4 策謀篇』あらすじと感想文
- 皇帝の誘拐事件と亡命
- ラインハルトの作戦
- ヤンの詭計
- ラインハルトとキルヒアイス
ネタバレあります。ご注意ください。
行こうか、キルヒアイス、おれとお前の宇宙を手にいれるために
田中芳樹さんの小説『銀河英雄伝説4 策謀篇』読書感想です。とうとう宇宙を手に入れるために動き出したラインハルト。
第4巻〈策謀篇〉〜第5巻〈風雲篇〉にかけては、銀河帝国と自由惑星同盟の全面戦争が描かれていました。
第4巻では、ラインハルトの戦略が際立っていたよ。
「ラグナロック」作戦です。ヤンも大活躍しますが、ラインハルトの作戦を予測していたのに、今回も未然に防ぐことは叶わず・・・。
『銀河英雄伝説4 策謀篇』あらすじ
大河SF小説
第三勢力フェザーンに操られた門閥貴族の残党が七歳の皇帝を誘拐、自由惑星同盟の協力を得て帝国正統政府樹立を宣した。だが、フェザーン高官と密約を交わしていたラインハルトはこの状況を逆手に取り、フェザーン回廊を通って同盟へ大進攻することを目論む。その真意を見抜きながらもイゼルローン防衛から動けぬヤンと、帝国軍の双璧の一人ロイエンタールの死闘が幕を開けた。
『銀河英雄伝説4 策謀篇』ネタバレ感想文|銀河帝国&フェザーンvs自由惑星同盟
『銀河英雄伝説4 策謀篇』では、銀河帝国がいよいよ自由惑星同盟へ進撃します。ラインハルトvsヤンの全面戦争へ突入。
3カ国の力関係が崩れた。
銀河帝国、自由惑星同盟、そして商業大国フェザーンです。
今までバランス良く(でもないけど)保てていたかのように見えた3つの国にヒビが入る・・・。銀河帝国とフェザーンが盟約を結び、ラインハルトは同盟領へ進軍するのです。
発端は皇帝ヨーゼフ二世の誘拐事件。フェザーンの思惑によるものでした。
皇帝ヨーゼフ二世の誘拐事件と自由惑星同盟への亡命
フェザーンより、門閥貴族の残党・ランズベルクとシューマッハが帝都オーディンに戻ってきていることに不審を抱いたヒルダ。
「わたしは思うのです。フェザーンがテロを使嗾するとすれば、暗殺ではなく、要人を誘拐することではないか、と」
ヒルダ、鋭いですね。彼女が言う要人というのは、皇帝ヨーゼフ二世を指しています。・・・実はラインハルトにとっては願ったり叶ったりでした。
もしも、誘拐された皇帝を同盟が保護すれば、ラインハルトは同盟に侵攻する大義名分を手にいれることができる。
彼は皇帝が誘拐されることを見抜いていたのに、わざと助けなかったのです。
宇宙を手に入れるためには同盟を制圧しなければならないし、キルヒアイスとの約束だし・・・と、読みながらグチグチ悩みましたが、ラインハルトが冷徹に見えました。
キルヒアイスが生きていたら、ラインハルトを止めていたに違いない・・・。
キルヒアイスの死は、私にとっても大きな衝撃でした。つい、キルヒアイスが生きていたらと考えてしまいます。
皇帝を誘拐したランズベルクとシューマッハは、自由惑星同盟へと亡命。そして同盟は皇帝を保護しました。
ラインハルトにとっては、良い方向に転がったわけだ。
ちなみに、第2巻〈野望篇〉での内乱で、門閥貴族たちはラインハルトに一掃されています。
その残党をけしかけたのはフェザーン。ルビンスキーとケッセルリンク父子の争いは、切なさを通り越して恐怖を感じました。
ルビンスキー、とにかく不気味です。
ラインハルトの作戦「神々の黄昏(ラグナロック)」
ラインハルトの作戦がみごとでした。作戦名は「神々の黄昏(ラグナロック)」、陽動作戦です。
フェザーン回廊を通過して、同盟領に侵攻する
銀河帝国から同盟領へ侵攻するには、イゼルローン回廊を通るしかないと思い込んでいる同盟軍に、不意をつかせる戦略ですね。
「ラグナロック」作戦の概要は以下の通りです。
恐るべし、ラインハルトの策略。
イゼルローン回廊にはロイエンタールを、増援軍(フェザーン占拠)にウォルフガング・ミッターマイヤー、ナイトハルト・ミュラーを任命しました。
陽動とバレないように、イゼルローンにはロイエンタール率いる大多数の兵を置くことにしたんだね。
もっとも、イゼルローン要塞を任されているヤンだけは、ラインハルトの動きをよんでいたのだけど・・・。
ラインハルトの考えが分かっても、結局どうすることもできなかったヤン。駐在弁務官としてフェザーンに滞在しているユリアンともども、苦味を感じました。
奇蹟のヤンは、イゼルローン要塞でロイエンタールと闘うことになります。
イゼルローン要塞vsロイエンタール|ヤンの詭計
『銀河英雄伝説』は、宇宙戦争シーンも迫力があって面白いんです。ヤンの詭計にハマったロイエンタール、危うし・・・でした。
おれとしたことが、功をあせって敵のペースにのせられてしまった。旗艦に陸戦部隊の侵入を許すとは、間の抜けた話だ
いつも冷静沈着なロイエンタールが・・・、珍しい。
銀河帝国軍が有利に思えた闘いだけど、ロイエンタールが虚をつかれたところが新鮮で面白かったです。
侵入したのはシェーンコップです。彼とロイエンタールの一騎打ちも迫力がありました。・・・結局、ロイエンタールを捉えられず、退くことになったけど、みごとな策略です。
ヤンとシェーンコップ、良いコンビだね。
ちなみにイゼルローン要塞は、もともと帝国軍の要塞だったけど、第1巻〈黎明篇〉で同盟軍ヤンが奪い取りました。この攻略戦も面白かったです。
キルヒアイスに語りかけるラインハルト
ラインハルトが首にかけたロケットを眺め話しかけるシーンが何度とありました。
そのロケットの中には、姉アンネローゼとキルヒアイスとラインハルトの3人の写真が収まっています。
「行こうか、キルヒアイス、おれとお前の宇宙を手にいれるために」
キルヒアイスに語りかけるシーンが好き。
冷徹なラインハルトを見るたびに、キルヒアイスがいてくれたら・・・と思うこともあるけど、彼の中ではいつもキルヒアイスと一緒。
ほっこりしました。宇宙を手にいれることは、キルヒアイスの願いでもあるんですよね。
これからもラインハルトは、キルヒアイスとともに歩んでいくんだろうな。
別館ではアニメのレビューも書いてるよ。