『プロジェクト・ヘイル・メアリー』ネタバレ感想文・あらすじ|ドキドキのバディ小説|アンディ・ウィアー

- 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』あらすじと感想文
- ヘイル・メアリー計画の解説
- グレースとロッキーの絆
- グレースがプロジェクトに参加した理由
- 地球とエリドの救世主、タウメーバ
ネタバレあります。ご注意ください。
ぼくはきみを死なせない。
アンディ・ウィアーさんのSF小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を読みました。はじめて読む作家さんで、とても面白かったです。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』をひとことでいうと、地球人と地球外生命体とのバディもの。
上下巻とボリュームがあり、読みごたえがありました。面白くて下巻はほぼ一気読みです。

海外小説ながら読みやすかったよ。
アンディ・ウィアーさんは『火星の人』で有名な作家さんですね。そちらは未読、でも映画はみました。
『火星の人』同様、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』もレビューの評価が高く、納得の面白さです。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』あらすじ
海外SF小説
グレースは、真っ白い奇妙な部屋で目を覚ました。自分の名前も思い出せなかったが、ここは地球ではないらしい。ここは宇宙船〈ヘイル・メアリー〉号。ペトロヴァ問題と呼ばれる災禍によって、太陽エネルギーが指数関数的に減少、存亡の危機に瀕した人類は、遠く宇宙に向けて最後の希望となる恒星間宇宙船を放ったのだった。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』ネタバレ感想文|過酷なプロジェクトと異星人ロッキー

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、地球人類を救うための計画を描いた物語です。
主人公はひとりの男、グレース。物語は宇宙船ヘイル・メアリー号の中から始まりました。でも彼は記憶を喪失しているんですよね。
自分がどこの誰で、ここはどこか、なぜ自分はここにいるのか?
目が覚めたら宇宙に独りぼっち、自分が誰だか思い出せないって怖いかも・・・。しかも一緒に宇宙船に乗っていたクルーたちは隣で死んでいるんです。

想像しただけでパニックになりそう。
それでも彼は冷静で、徐々に記憶が戻ってきます。グレースが宇宙船に乗るまでの過去と、宇宙にいる現在が交互に描かれていました。
- 彼はなぜ宇宙船の中にいるのか
- 地球はどんな危機に直面しているのか
- プロジェクト・ヘイル・メアリーとは、どんな計画なのか
自分のことや、計画の内容が明かされて(思い出して)いく描写はミステリー仕立てで面白かったです。
【解説】アストロファージから人類を救え!ヘイル・メアリー計画とは?
本のタイトルにもなっている「プロジェクト・ヘイル・メアリー」。いったいそれはどんな計画なのでしょうか。
ヘイル・メアリー計画とは、地球の人類を救うためのプロジェクト。
何から地球を救うのかというと、〝アストロファージ〟(宇宙を食べるもの)からです。
「あれが太陽を……食べているということですか?」
アストロファージ(・・・と名付けられたもの)が太陽のエネルギーを食べてしまい、太陽が暗くなっていく。その結果、地球が氷河期のようになってしまい、生命が絶滅する!?

絶望的な状況だけど、希望の光も発見したんだ。
まわりの星はアストロファージに感染しているのに、その中で感染していない星を見つけたのです。
タウ・セチ(くじら座タウ星)は、なぜアストロファージに感染していないのか。原因をつきとめるために、宇宙船(ヘイル・メアリー号)をつくって、クルーをタウ・セチに送りこむことにした。
↑これが計画(プロジェクト・ヘイル・メアリー)の全容で、選ばれたクルーのひとりがグレースだったわけです。

原因がわかれば、アストロファージを何とかできるかもね。
グレースと異星人ロッキーの絆に泣ける
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が面白いのは、異星人が登場して、グレースと一緒に問題を解決に導くところなんですよね。いわゆるバディものです。
エリダニ40星系からきた異星人(ロッキー)の母星エリドもアストロファージに感染していました。

グレースとロッキーが、一緒にアストロファージについて調べることになったのが面白かったよ。
まずは、お互いの言葉を理解して、ヘイル・メアリー号にロッキーの居場所を作って・・・。なにしろ言葉も違えば住んでいる環境も違うわけだから、やることが山積みなんですよね。
宇宙という過酷な環境で、様々なハプニングに立ち向かうグレースとロッキーに、いつしか絆がうまれるんです。
ラスト、ロッキーを救うために引き返すグレースの行動は感動ものでした。自分が犠牲になる覚悟のグレースに、ロッキーは・・・
「ぼくはきみを死なせない。ぼくらはきみを家へ帰す。エリドはきみに感謝する。ぼくらはきみを救うためにあらゆることをする」

ロッキーも良い奴なんだ。
地球に帰ることができなくなったグレースは、ロッキーの母星に行くことになりました。
本の帯に『三体』の次によむならコレ・・・というようなことが書かれていて、思わず『三体Ⅱ 黒暗森林』を連想したのだけど。

劉慈欣さんのSF小説『三体』では、異星人がいても暗黒森林攻撃を恐れて母星を明かすのはタブーとされていたから、まったく正反対の展開。

でもこういうのも良いですね。ほっこりします。
グレースがプロジェクトに参加した理由がシビアだった

ヘイル・メアリー計画は一方通行のプロジェクトなんです。
タウ・セチに行って原因を探り、情報をロケットで地球へ飛ばす。・・・最初からクルーの帰還は想定されていませんでした。
人類を救うためとはいえ、自分が犠牲になるプロジェクトに、なぜグレースは参加したのか。
彼がプロジェクトに参加した理由が明かされたのは下巻です。記憶がよみがえるカタチで。
実は自分から志願したわけではなくて、拒否していたのに強制的に乗せられていた・・・というのには、びっくりしました。

けっこうシビアな展開だったんだね。
大きな目的の前には、個人の思いなんて踏みにじられるのか・・・。でもロッキーと出会い、人類のために奮闘するグレースはカッコよかったです。
人類は救われるのか?地球とエリドの救世主・タウメーバ
グレースとロッキーの活躍により、アストロファージを食べるタウメーバの存在が明らかになりました。
地球とエリドの救世主、タウメーバ。
これで救われる!と思いきや、太陽系とエリドの環境ではタウメーバは生きられないという問題か浮上するのです。・・・なかなか上手くはいかないものですね。

でもグレースはあきらめないんだ。
人類は救われるのか、否か。それはぜひ本を読んで確かめてください。ドキドキの展開に目が離せなくなります。


