- 『銀河英雄伝説6 飛翔篇』あらすじと感想文
- 簡単な時系列
- ヤンの逮捕と救出劇
- ハイネセン脱出計画
- キュンメル事件
- ロイエンタールの思い
ネタバレあります。ご注意ください。
ヤン・ウェンリーが無実で逮捕されることが必要なのだ
田中芳樹さんの小説『銀河英雄伝説6 飛翔篇』読書感想です。前巻で自由惑星同盟を制圧した銀河帝国ラインハルト。
6巻では、皇帝に即位した彼のローエングラム王朝が始まりました。
ラインハルトに主だった動きはなく、宇宙戦争もなかったけど、ヤンには転機が訪れます。望むと望まざるとに関わらず・・・。
もくじ
『銀河英雄伝説6 飛翔篇』あらすじ・評価
大河SF小説
今や至尊の冠を戴く存在となったラインハルトを襲う暗殺事件。各処で暗躍する“地球教団”の差し金と知り、ラインハルトは彼らの聖地たる地球に軍を派遣する。一方、悠々自適の退役生活を楽しむヤンも、己の周囲に監視網が巡らされていることに気づく。やがてある日、彼の元を黒服に身を包んだ男たちが訪れた。一度は平穏の時を迎えた銀河は、再び動乱に呑まれようとしていた。
『銀河英雄伝説6 飛翔篇』簡単な時系列

ラインハルト政権の始まりが描かれた『銀河英雄伝説6 飛翔篇』。ローエングラム王朝内で事件が起こり、それが途方もないものに発展していく予感を抱きました。
簡単な時系列
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宇宙暦799年5月バーラトの和約帝国軍と同盟軍は「バーラトの和約」を結ぶ。ハイネセンに帝国高等弁務官としてレンネンカンプを任命
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宇宙暦799年6月ヤンとフレデリカの結婚式
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ラインハルト、皇帝に即位ローエングラム王朝の始まり
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宇宙暦799年7月キュンメル事件ラインハルト、キュンメル男爵邸を訪れ事件に巻き込まれる
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御前会議ラインハルト、キュンメル事件を画策した地球教徒討伐を決定。ワーレンが任務につく
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ユリアン、地球へ到着地球教に潜入する
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艦船強奪事件レサヴィク星域にて、破壊予定だった同盟軍の艦船がメルカッツにより強奪される
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ヤンの逮捕ヤン・ウェンリー退役元帥、反和平活動防止法の違反容疑(濡れ衣)で逮捕される
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ヤンの救出叛乱部隊(フレデリカ、シェーンコップ、キャゼルヌ、アッテンボローなど)、ヤンを救出。レンネンカンプを拉致しハイネセンを離れる
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地球制圧ワーレンが指揮する討伐軍、地球を制圧
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宇宙暦799年8月エル・ファシル独立宣言
ヤンに転機が訪れ、ユリアンは地球で大活躍します。・・・ラインハルトが大人しかっただけに、彼らが目立ちました。
ハイネセンに帝国高等弁務官としてレンネンカンプを任命したラインハルトの人事が、ヤンにとっては悲劇の始まりでした。
ヤンたち叛乱部隊は、今後、ラインハルトにとって驚異となり得るのではないか。
なかなか面白い展開です。ラインハルトもヤンも、「平穏」や「平和」と言った言葉は似合わないですね。
『銀河英雄伝説6 飛翔篇』ネタバレ感想文|ヤンの逮捕と救出劇

『銀河英雄伝説6 飛翔篇』で1番面白かったのは、ヤン逮捕&怒涛の救出劇です。
濡れ衣で逮捕されたヤンでしたが、仲間たちが間一髪で救出。怒涛の展開にワクワクしました。・・・悠々自適な生活を望んでいたヤンには同情しますが。
逮捕されたヤンと怒涛の救出劇
フレデリカと結婚し、退役して悠々自適な生活を望んでいたヤン。でも希望通りにはいかず、周りはそれを許してくれませんでした。
同盟内の反帝国強硬派を激発させるためには、まずヤン・ウェンリーが無実で逮捕されることが必要なのだ。それでこそ反帝国派を怒らせ、暴走させることができる
ヤン、濡れ衣を着せられて逮捕されてしまうのです。展開的には面白いけど、時代の波は彼を自由にしてはくれないのですね。
せっかく退役できたのに、ちょっと可哀想・・・。
フレデリカたちはヤン救出に向かいます。怒涛の救出劇は、本当に間一髪のところでした。
仲間たちもヤンを信頼していて、ヤンも彼らが助けにきてくれることを疑っていません。時間稼ぎをするヤンの姿に、彼らの信頼関係が伺えました。
ハイネセン脱出計画と様々な思惑
ハイネセン脱出計画
レンネンカンプ弁務官を人質として、惑星ハイネセンを離れます
レンネンカンプを利用してハイネセン脱出計画を立てたヤン。そうせざるを得ない展開を招いたのは、レンネンカンプ自身でした。
レンネンカンプは、ヤンを色メガネで見てしまい、あらぬ疑惑に取り憑かれて残念な結果となってしまいます。
オーベルシュタインの思惑や、ヤンひとりを犠牲にして自由惑星同盟を守ろうとした国家元首レベロなども絡み、彼に牙をむく・・・。
本人には銀河帝国に楯つく気持ちはなくとも、彼を知らない周りの人はそうは思わない。・・・全く迷惑な話です。
結果、ヤンは自分の身を守るためにハイネセンを出立。宇宙を漂っていたメルカッツと合流し、イゼルローンに向かうことになります。
銀河帝国とヤンが再び争うことになると思うと、今後の展開が楽しみになりました。
『銀河英雄伝説6 飛翔篇』目をひいたシーン

ヤンの逮捕&救出劇も面白かったけど、他にも目をひいたシーンがあります。
ヒルダの従弟ハインリッヒが、何かしでかすんじゃないかと不穏な予感がしてたけど的中。ロイエンタールの迷いも気になりました。
キュンメル事件
序盤はラインハルトを罠にかけようとしたキュンメル事件が描かれています。
「ぼくはなにかして死にたかった。どんな悪いことでも、ばかなことでもいい。なにかして死にたかった……それだけなんだ」
病弱なハインリッヒはその場で亡くなったけど、彼の「なにかして死にたかった」との思いは達せられました。・・・最悪なカタチで。
裏で糸を引いていたのは地球教です。フェザーンのルビンスキーと言い、地球教と言い、不気味・・・。今後も関わってくると思うと緊張します。
ロイエンタールの思い
今回に限ったことではないけど、『銀英伝』の中で、ラインハルトやヤンの他に気になるキャラがいます。
オスカー・フォン・ロイエンタール、銀河帝国の金銀妖瞳の提督。
ロイエンタールとミッターマイヤー。性格は全然違うけど、2人とも良き友人でラインハルトの下で大活躍する提督です。
『銀河英雄伝説4 策謀篇』では、イゼルローン要塞でのヤンとロイエンタールの戦いも描かれていました。
ラインハルトにとっては有能な部下ですが、ロイエンタールの心には闇が漂っていて、ちょっと心配なんですよね・・・。
もしも彼がラインハルトを見限るようなときがあれば、反旗を翻すのではないか。
エルフリーデに対して投げかけた本音とも言えるロイエンタールの言葉に危惧を抱きました。
「この世でもっとも醜悪で卑劣なことはな、実力も才能もないくせに相続によって政治権力を手にすることだ。それにくらべれば、簒奪は一万倍もましな行為だ。すくなくとも、権力を手にいれるための努力はしているし、本来、それが自分のものでないことも知っているのだからな」
ラインハルトは実力も才能も備わっていて、努力を怠らず皇帝に成り上がった人物です。だからロイエンタールも部下として大活躍しました。
第6巻で描かれたラインハルトは戦いが終わったからか覇気がなく・・・。ロイエンタールの心情を読んでいると、危惧を抱かずにはいられなくなるんです。
『銀河英雄伝説6』飛翔したヤンとユリアン
宇宙戦争はなく、惑星内での事件が勃発する〈飛翔篇〉。惑星内での事件にハラハラしました。
ユリアンは地球で大活躍、容疑をかけられたヤンはハイネセンを飛び立ち、転機が訪れました。
今後のローエングラム王朝に、ヤンとユリアンがどう関わってくるのか楽しみです。