『銀河英雄伝説7 怒濤篇』あらすじ・ネタバレ感想文|ヤンの罠&マル・アデッタ星域会戦|田中芳樹
- 『銀河英雄伝説7 怒濤篇』あらすじと感想文
- イゼルローン要塞攻略
- マル・アデッタ星域会戦
- 相容れない2人の英雄
ネタバレあります。ご注意ください。
なぜ雷神のハンマーを撃たぬ!?
田中芳樹さんの小説『銀河英雄伝説7 怒濤篇』読書感想です。第7巻では、怒涛のごとく繰り広げられる2つの宇宙戦争が目を引きました。
- イゼルローン要塞攻略(ヤンvsルッツ)
- マル・アデッタ星域の会戦(ビュコックvsラインハルト)
前巻(6巻)で、ヤンは濡れ衣を着せられてハイネセンを追われたんだよね。
その彼がイゼルローン要塞を奪還し、(元々は帝国軍の要塞なんだけど)みごとに帰還を果たします。・・・これでヤンがイゼルローンを攻略するのは2回目になりました。
宇宙戦争シーンは白熱だったよ。
『銀河英雄伝説7 怒濤篇』あらすじ
小説『銀河英雄伝説』
退役生活に別れを告げ、“不正規隊”を連れエル・ファシルの独立革命政府と合流したヤンは、二度目のイゼルローン攻略を目論む。一方、自由惑星同盟を完全に粉砕するべく、首都ハイネセンへ艦隊を差し向けたラインハルトに、同盟軍の宿将ビュコックが最後の抗戦を試みた。圧倒的劣勢のなか、護るべきもののために立ち上がった老将と若き皇帝の激戦は、英雄たちに何をもたらすのか。
『銀河英雄伝説7 怒濤篇』ネタバレ感想文|白熱した2つの宇宙戦争
『銀河英雄伝説7 怒濤篇』では、時を同じくして繰り広げられた2つの宇宙戦争が白熱でした。
- イゼルローン要塞攻略(ヤンvsルッツ)
- マル・アデッタ星域の会戦(ビュコックvsラインハルト)
イゼルローン要塞での戦いではヤンが再び勝利し、みごとに帰還を果たします。そして、マル・アデッタ星域会戦(自由惑星同盟最後の戦い)では、ラインハルトが勝利。
負けたけど、ビュコックがカッコよかった。
同時期に勃発した2つの戦いは、帝国軍よりも自由惑星同盟のヤンとビュコックにスポットが当てられていました。
【簡単な時系列】ヤンにとっての「ホーム」イゼルローン要塞
イゼルローン要塞攻略へ
「イゼルローンに帰るか……」
ハイネセンを出立し、宇宙を彷徨っていたヤン不正規隊は、独立したエル・ファシルよりイゼルローン要塞に向かいます。
みごとに2度目の攻略に成功。再び帝国軍から奪還し、イゼルローン回廊への出入口を確保しました。
ヤンが初めてイゼルローン要塞を攻略したのは、第1巻〈黎明篇〉だったね。
イゼルローンは、元々は帝国軍の要塞です。難攻不落と言われていた無敵の要塞を、ヤンが落としたのは宇宙暦796年のことでした。
イゼルローン要塞はヤンにとって「ホーム(帰るべき家)」のような存在なんだ。
宇宙艦での生活がほとんどだったヤンにとっての「帰る場所」です。再び帝国軍に奪われるまでの3年近くを、フレデリカやユリアン、アッテンボローなどの仲間とともに過ごしました。
第4〜5巻にかけての帝国軍ロイエンタールとの戦いにより、イゼルローン要塞を放棄してラインハルトとの戦いに望んだヤン(→結果、自由惑星同盟軍は敗退。ラインハルトが皇帝に即位)。
そして本篇第7巻。イゼルローン要塞を占拠していた帝国軍ルッツとの戦いに勝利し、再び帰還を果たすのです。・・・放棄してから1年後ですね。
ヤンが帰還した瞬間、安堵のため息がもれました。
【イゼルローン要塞攻略】ヤンが仕掛けた罠|撃てない雷神のハンマー
イゼルローン要塞攻略に当たって、帝国軍ルッツに仕掛けた奇策はペテン・・・、いえ、ヤンらしいものでした。
ルッツの元に届いた2つの相反する司令。
普通、相反する司令が届けば、片方は偽の司令だと思いますよね。まさか、両方ともヤンが送った偽の司令だとは思わない・・・。
彼が狙ったのは帝国軍の混乱です。イゼルローン要塞の通信回路に奇妙な司令を流し、ルッツを混乱させる。
たんにルッツを出撃させるだけならヤンが策略を弄する必要はない。ヤンが策略を弄しているとルッツにさとらせてこそ成功率が高まるのである
最終的にルッツがヤンを罠にはめようと思うことが、実は彼の狙いだったんだ。
ルッツの出撃はヤンの狙い通りだったわけです。彼は見越していました。ルッツが「雷神のハンマー」を撃とうとすることも、そして、それが起動しないことも・・・。
「なぜ雷神のハンマーを撃たぬ!?」
焦ったルッツが、ちょっぴり可哀想。有能な司令官なのに、ヤンにかかるとひとたまりもないですね。
でも、なぜ「雷神のハンマー」は起動しなかったのか?実は・・・、
要塞の防御システムを無力化するキー・ワードが設定されていた。
これこそが、第5巻のときに要塞を放棄したヤンが仕掛けた本当の置土産(罠)だったのです。それを送信したとき「雷神のハンマー」は無効化されました。
・・・そのキーワードというのがまたヤンらしいものなんですよね。
さすがヤン。紅茶が飲みたくなっちゃった。
ルッツを罠に嵌め、みごとにイゼルローン要塞を攻略したヤンは帰還を果たします。1年ぶりの「ホーム」でした。
マル・アデッタ星域会戦|老提督ビュコック、最期の戦い
同盟軍の老提督ビュコックが指揮をとるマル・アデッタ星域会戦(自由惑星同盟最後の戦い)も読み応えがありました。
皇帝ラインハルトvs老提督ビュコック
白熱の宇宙戦争はラインハルトの勝利に終わったけど、ビュコックの意地を見せつけられた気分です。
降伏を促した帝国軍に対して、「民主主義とは対等の友人をつくる思想であって、主従をつくる思想ではない」と主張する老提督。
わしはよい友人がほしいし、誰かにとってよい友人でありたいと思う。だが、よい主君もよい臣下ももちたいとは思わない。だからこそ、あなたとわしはおなじ旗をあおぐことはできなかったのだ
自分の意志を貫き通す姿がカッコよかった。
軍人の中の軍人・・・という感じ。最期までラインハルトと相容れなかったけど、魅力的な人物ですね。
相容れない2人の英雄、ラインハルトとヤン
皇帝ラインハルトと同盟軍ヤン。『銀河英雄伝説』は彼ら2人の英雄の魅力が半端ないのですが・・・、
常に陣頭に立って敵と戦う姿勢にあること。
彼らは相対する敵同士だけど、お互い、この姿勢を尊重しているんだ。
2人が手を組んで一緒の敵に立ち向かう姿を見てみたいと、ふと思いました。(立ち向かう相手はルビンスキー、または地球教かな)
きっと、彼らの前に敵はなしに違いない。無敵コンビだね。
・・・そんな夢を抱いてしまったのは、このレビューを書いている時点で8巻、9巻を読み終わっているからです。
ラインハルトにとってのヤン、ヤンにとってのラインハルトとは?
お互いの実力を認めながらも決して相容れない2人の英雄に思いを馳せました。『銀河英雄伝説』どっぷりハマっています。
別館ではアニメのレビューも書いてるよ。