『ぼくのメジャースプーン』あらすじ・ネタバレ感想|壊れた心と効果的な罰|辻村深月
- 『ぼくのメジャースプーン』あらすじと感想文
- 悩める少年の不思議な能力
- リアルな悪意の罪と罰
- 命について
少しだけネタバレあります。
ぼくは、他の人にはない不思議な力を持っている。
辻村深月さんの小説『ぼくのメジャースプーン』感想です。タイトルにひかれて読んだのだけど、少し重い内容でした。
苦くて切なくて愛情も感じられる物語。でも胸がジーンと熱くなります。
メジャースプーンって計量スプーンのことだよね。
ふみちゃんの宝物で、ぼくにとっては お守りのようなものでした。
『ぼくのメジャースプーン』あらすじ
これはぼくの闘いだ
ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ・ふみちゃんはショックを受け、心を閉ざし言葉を失ってしまった。犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは一度だけ。ぼくは彼女の心を取り戻すため、実行にうつすことにした・・・。
『ぼくのメジャースプーン』ネタバレ感想文
『ぼくのメジャースプーン』は可愛いタイトルとは裏腹に、人の悪意を描いた作品でした。
罰、そして罪とはなんなのか?
不思議な力を持つ主人公と一緒に私も考えたくなります。でも途中で中だるみしてしまい読むのに時間がかかっちゃいました。
深いけど私は苦手かも・・・。
悩める少年の不思議な能力
主人公「ぼく」。彼には不思議な力が備わっていました。
「もし○○をしなければ、△△が起きる」という不思議な力です。
ぼくが言った言葉がほんとうになるんですよね。最初にこの力を使ったのは友達のふみちゃんに対してでした。
ピアノの発表会から逃げ出したふみちゃん。
ふみちゃんに言った内容はそこまで深刻ではないけど、例えば「○○をしなければ、あなたは自殺する」なんて囁かれたら怖い・・・。
ある意味、脅迫。
不思議な力を持った小学生が友達のために悩み、罪と罰、そして命の重さを学んでいく。一生懸命に考え悩む主人公の姿に胸が熱くなりました。
リアルな悪意の罪と罰
学校で飼っていたウサギが殺された。
むき出しの悪意が描かれていました。それを見たふみちゃんの心が壊れてしまいます。
リアル社会にもいますよね。平気で動物を虐待したり命を踏みにじったりする。なんの罪悪感も抱かない市川雄太 (本書の登場人物) のような人。
危害を加えたのが動物でも、その結果、周りの子供たちの心まで壊れてしまう。そのことにもなんの罪悪感も感じない。
ぼくは、ふみちゃんの心を壊した彼に復讐をしようと、彼の罪と罰について考えます。秋山先生とともに。
深いんだけどこういうのは少し苦手。
秋山先生とのやりとりに、中だるみしちゃいました。「○○をしなければ、△△が起きる」という例えもわかりずらくて・・・。
最も効果的な罰って人それぞれだよね。
加害者が罪の意識を持っているか否かでも変わってきます。ウサギを殺した市川には罪悪感はなく、彼に罪の意識を認めさせるのは難しい。
だったら何が彼にとって効果的な罰になりうるのか。・・・なかなか深いですよね。
命について
命の重さについても書かれていました。
ウサギが殺されるのは残酷です。でもそれって、ウサギだからなのか。例えば虫とかだったらどうだろう?
夏に飛び回っている蚊とかだったら平気でペチっとやってます。でもあまり罪悪感は感じない・・・。
命の重さは平等なはずなのに、自分のエゴのためにいつの間にか差をつけています。
少しモヤモヤした気持ちになった。
『ぼくのメジャースプーン』復讐と優しい結末
主人公が出した結論。それはショッキングなものでした。彼は市川に言います。
「今すぐここで○○、そうしなければ、△△」
えっ!? 壮大なネタバレになるから書かないけど、この結末は好きです。温かなラストでした。
小学生の視点で進んでいくから読みやすかったよ。