- アクセル・ハッケ『ちいさなちいさな王様』あらすじと感想
- 歳をとるにつれて小さくなる
- 大人になって失ったもの
- 広がる想像の世界
- 命の終わりと始まり
- ちいさな王様に学ぶ大切なこと
少しだけネタバレあります
『ちいさなちいさな王様』
アクセル・ハッケ (作)
ミヒャエル・ゾーヴァ (絵)
人差し指サイズの小さな王様が、僕の前に現れた―。
『ちいさなちいさな王様』感想です。とても素敵な物語でした。100ページちょっとなので、すぐ読めてしまいます。
『ちいさなちいさな王様』あらすじ
ドイツのベストセラー小説。
ある日、ふらりと僕の部屋にあらわれた、僕の人差し指サイズの気まぐれな小さな王様。王様の言うところによると、どうやら彼の世界では子ども時代が人生の終わりにあるらしい。僕らのところとは違って・・・。
『ちいさなちいさな王様』感想
大人になるにつれて得たものと失ったものがありました。そして「死」について。主人公の「僕」と、小さな王様のお話です。
ある日、ふらりと 僕の部屋にあらわれた僕の人差し指サイズの気まぐれな小さな王様。
挿絵がインパクトあります。5つの章からなっていました。
- 大きくなると小さくなる
- 眠っているときに起きている
- 存在しないものが存在する
- 命の終わりは永遠のはじまり
- 忘れていても覚えている
私の隣にも彼が存在しているような気分になります。王様はとても大切なことを教えてくれました。
歳をとるにつれて小さくなる

私たちは年をとるにつれて大きくなっていきます。
でも王様は逆でした。生まれた時は大きくて、だんだんと小さくなっていく。そしてその時から何でも出来てしまうんです。
生まれたてで もう大人のような王様。小さくなるにつれて どんどん忘れていくようです。大人から子供へ戻っていく感じですね。
「何者」かになってしまった私
大人になって失ったもの
「何者」 かになってしまった私が、別の 「何者」 かになろうとしても難しい。
小さい頃に抱いていた夢・・・。今は全く違う職業に就いていますが、そういえば私も夢を抱いていました。
遅すぎるということはないのかもしれませんが、私も「何者」かになった今、全く別のものになりたくてもなれない現実があります。
歳を重ねるにつれて、あらゆる可能性がどんどん狭まってゆく。少しだけ切なくなりました。
もうひとつ、大きくなるにつれて失っていくものがあります。
広がる想像の世界

成長するにつれて得るもの。それは常識や知識といったものです。でも反対に失っていくものもあります。
想像力です。
子供の頃は先入観がなく想像力が豊かでした。でも世の中を知ることで、限りなく豊かだったものが失われていきます。
どうしてランプに明かりがつくのか。テレビの画面に映像がうつるのか。
今は理屈がわかるから何とも思わないけど、小さな頃は何でも想像してました。何にでも無限の可能性があったんです。
小さな王様は 知識を失っていくことで可能性が広がっていく。彼の世界が羨ましくなります。
主人公の「僕」、「私」の隣にも王様がいるような気持ちで読んでいました。
彼と一緒にいることで「僕」と「私」は小さい頃に見えていたはずの風景をまた見ることができる。知っているはずなのに忘れていたことを思い出させてくれます。
命の終わりと始まり
4章の「命の終わりは永遠のはじまり」が素敵でした。
この章で描かれているのは「人が亡くなること」です。
人は亡くなると星になるんです。そして王様の世界に生まれ変わる。星から王様が誕生します。
ちいさな王様に学ぶ大切なこと
真実は目に見えないもの。
大人になるにつれて 目に見えるものが真実で大切だと思ってしまいがちです。そしてそれしか信じなくなる。小さな頃は想像していたことも省略してしまう。
以前よんだ『星の王子さま』や『サンタクロースっているんでしょうか?』でも感じたことです。
「大切なことは目に見えない」ということ。
想像することをやめてしまえば 大切なことも気づかなくなってしまいます。たまには「見る」前に 思い描いてみることも必要ですね。
図書館で借りてきたこの本。手元に1冊持っておきたくなるような物語でした。


