- 東野圭吾さんの小説『危険なビーナス』あらすじと感想文
- 伯朗の危険な恋
- 後天性サヴァン症候群
- フラクタル図形
- 「寛恕の網」に隠された秘密
少しだけネタバレあります。
恋した彼女は危険なビーナス!?
東野圭吾さんの小説『危険なビーナス』感想です。止まらず一気に読んでしまいました。ただ結末(オチ)はちょっと呆気にとられてしまいましたが。
東野さんの小説は、ミステリーだけでなく科学要素もあるから面白いですね。
『危険なビーナス』あらすじ
テーマは 「才能」 と 「脳科学」
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
伯朗の弟が失踪した。彼の妻・楓は、明るくしたたかで魅力的な女性だった。楓は夫の失踪の原因を探るため、資産家である夫の家族に近づく。兄である伯朗は楓に頼まれ協力するが、時が経てばたつほど彼女に惹かれていく・・・。
『危険なビーナス』ネタバレ感想文
物語に盛り込まれていたのは、才能と脳科学。
後天性サヴァン症候群とフラクタル図形に興味がわきました。そして、『危険なビーナス』というタイトルからも想像できるように魅惑的な女性が登場します。
伯朗の危険な恋

主人公・伯朗は動物病院ではたらく獣医。彼の前にカーリーヘアのほどよく肉感的で魅力的な女性が現れました。楓と名乗る彼女は彼の弟である明人の妻だったのです。
失踪した弟の無事を祈り、明人の実家の矢神家について調べ始める2人。伯朗はカエデに恋をしてしまいます。
本のタイトルの『危険なビーナス』というのは、言うまでもなく楓のこと。
「危険な」とはどういうことかと想像をめぐらせながら読んでいました。
伯朗はすぐに人を好きになってしまうタイプ。東野さんの小説では珍しく登場人物があまり好きになれなかった・・・。
彼にライバルが現れます。矢神家の愛人の息子・勇磨です。子供みたいに嫉妬してしまう主人公の心理描写を読みながら、こんな男イヤだなと思いました。
失踪した明人の行方も気になるけど、この恋がどんな形で終結するのかも目が離せません。
後天性サヴァン症候群

後天性サヴァン症候群について書かれていました。
東野さんの作品は、こういう才能や科学に関するものを物語に絡めているから面白いんですよね。今回は脳科学です。
ダスティン・ホフマンが演じる主人公が床に落ちた数百本の楊枝を一瞬にして数えるという才能を発揮します。こういう才能は様々で一目見た風景を完璧に描けたり、1度聞いた音楽を完璧に再現したり・・・。
左脳は思考・論理を司るところで、右脳は知覚や感性を司るところ。
サヴァン症候群の多くは知的障害や発達障害がある人たちに見られるものだから、左脳のかわりに右脳が発達したのかな。
この物語で描かれているのは、後天性サヴァン症候群なるものです。
生まれつきではなく後から発症するもの。例えば事故などで脳に損傷を受けたりした場合、稀にそんなことがあるようです。
もし仮に 脳に電気ショックを与えることでその能力を引きだせたなら・・・。知的障害などなしに才能が芽生えるかもしれません。夢が広がります。
フラクタル図形

気になったのがもう1つ。
フラクタル図形です。
検索して意味を調べてみたのですが・・・うーん、よくわからない。この小説の中でわかりやすくフラクタル図形を説明している文章がありました。
小さく切ったカリフラワーをよく見ると、ちぎる前の姿とほぼ同じ。これをさらに小さくちぎっても、拡大して見たら元の姿と同じ。こういうのを数学ではフラクタルというんだそうです。
なるほど。そういう風に説明されると、カリフラワーもブロッコリーも面白い。確かにちぎっても同じ形ですね。
他にはこんな図形もフラクタルです

不思議な雰囲気がある図形。まれに後天性サヴァン症候群を発症した人が目にするものが、このような図形に見えることがあるようです。
『危険なビーナス』では、伯朗の実父が後天性サヴァン症候群でした。亡くなる間際、描いた1枚の不思議な絵。その絵にはある秘密があったのです。
「寛恕の網」に隠された秘密
母の遺品の中にあった1冊のアルバム。最後のページには明らかに写真が剥がされた跡がありました。
「寛恕の網」
伯朗の実父・手島一清が最後に描いていた絵です。それは素数に関係があるもので・・・。数学に疎い私には難しかったです。
悲しい幕引きです。母の死の真相、楓の正体、「寛恕の網」に隠されたもの、明人の行方・・・。すべての謎が一気に解決されました。
『危険なビーナス』結末は、あっさり
結末は少し拍子抜けしました。・・・そうきましたか。ちょっとあっさりしすぎのような気もします。
ストーリーも良かったですが、脳科学の方がとても気になり興味深々です。やっぱり東野作品はこういう要素が魅力ですね。


