- 葉真中顕さんの小説『絶叫』あらすじと感想
- 3つの視点
- 陽子の転落人生
- 自分の居場所
- 絶叫したくなったシーン
- ミス・バイオレットの正体
少しだけネタバレあります。
心の叫びがとまらない!
葉真中顕さんの小説『絶叫』あらすじと感想です。WOWOWドラマ原作小説。単行本で500ページ越えと、なかなかボリューミーな1冊でしたが面白く読み応えがありました。
ひとつ間違えれば自分が陽子になっていたかもしれないという恐怖を感じました。
『絶叫』あらすじ
1人の女の壮絶な物語
マンションの一室で発見された孤独死体。彼女の名前は、鈴木陽子。女性刑事・綾乃は、調べを進めるうちに彼女の結婚歴に不審を抱く。平凡であったはずの陽子の人生に何があったのか―。
『絶叫』感想
すさまじい・・・。
鈴木陽子という1人の女性の転落していく半生を描いたお話です。宮部みゆきさんの『火車』を連想しました。
『火車』は、主にクレジットカードによる自己破産で転落していく女性を描いたお話です。宮部さんの本の中でも特に好きな1冊。
『絶叫』は いろんな要素がこれでもかと盛りこまれています。毒親、ブラック企業、DV、保険金詐欺・・・。ボタンをひとつかけ間違えただけで狂う悲劇。
何でそうしてしまうの? とイライラしたり共感したり。他人事とは思えなくなるくらい陽子に感情移入してしまいます。切なくなりました。
3つの視点
NPO法人 「カインド・ネット」 代表・神代武が 何者かに殺される事件と、鈴木陽子がマンションの一室で孤独死体となって発見されること。
『絶叫』では 2つの事件が描かれています。いつ繋がるのかとドキドキしました。
主に3つの視点が切り替わって進んでいきます。
- 女性刑事・綾乃の視点
- 「カインド・ネット」 の人たちの視点 (証言)
- 誰かが陽子の人生を追っていく視点
刑事・綾乃は 孤独死体で発見された鈴木陽子を調べていく。現在から過去へと遡る作業です。陽子が結婚していた相手が複数人亡くなっているという事実。
一方、「カインド・ネット」 の人たちの視点は、神代の事件について彼らが警察での取り調べで供述しているシーンが描かれていました。
気になったのは ③ です。必ず 陽子・・・と呼びかけるような描写で始まる誰かの視点。陽子の半生、幼少期から現在・孤独死体で発見されるに至るまでが描かれています。
愛しげに 「陽子」 とささやく声の主が誰なのか気になりました。温かいんですよね、陽子を見つめる視線が。初めは母かな?とも思いましたが違いました。
最後に明かされます。意外な人物でした・・・。
陽子の転落人生

陽子の半生が綴られたものが1番 感情を揺さぶられました。誰かの温かい視線とは裏腹に見事なまでの転落人生。
最初は平凡だったはずなのに、どこから狂ってしまったのか。
神代と出会ってしまったときは、すでに転落していました。
それとも、あの母の元に生まれたときからすでに狂い始めていたのかもしれません。・・・子どもにとって母の影響はすさまじいと思わずにはいられません。
毒親の元に生まれ、山崎と結婚するも別れ、ブラック企業に入って枕営業に自爆、デリヘル嬢の果てに神代と出会う。
何かが違っていれば ここまでの転落はなかったかもしれません。何でこうなるかと思いつつも陽子が可哀想になりました。
明日は我が身というわけではないですが 危機感を覚えてしまいます。リアルな感じがして恐ろしかったです。
自分の居場所
陽子をみていると共感することもありました。彼女はずっと望み探し求めていたものがあったのです。自分の居場所でした。
自分の居場所は自分でつくるもの。・・・昔の嫌いだった上司の口癖を思い出しました。
的を射ていると言えなくもないですが、世の中には陽子みたいに自分の居場所がなくて苦しんでいる人もいるんですよね。
結局のところ彼女は自分の拠り所が欲しかっただけなのではないかと思いました。みんなが普通に持っているはずのものが彼女には与えられなかった。
それを求めるうちに落ちるところまで落ちてしまう・・・。
不器用だったんです、彼女は。だからホストや神代のような輩に捕まってしまう。
絶叫したくなったシーン
絶叫してしまいそうになったシーンがあります。エピローグの陽子と母のシーンです。
「生まれたくなんてなかったよ! 選べるのなら、別の家の別の子に生まれたかったよ! せめて男の子に生まれたかったよ!あなたに、愛されたかったよ! それでも―」
それでも母に 「ありがとう」 と言った彼女のことばを読んだとき哀しみに包まれました。感謝の気持ちを持ちながら彼女のしたことは・・・。
【ネタバレあり】ミス・バイオレットの正体は?衝撃の結末に絶句
2つの事件と3つの視点が1つに繋がっていく。ラストに絶句しました。陽子は自分の居場所を見つけたようです。
注意深くよむとわかるのですが、綾乃は捜査する中で彼女に会っているのですね。
ミス・バイオレット。
彼女は陽子です。朝焼けのすみれ色を見て陽子は決意しました。私の嫌いな上司の言葉どおり自分の居場所を自ら作った・・・。
罪を償って新たに人生をスタートさせて欲しいです。
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