『十二人の死にたい子どもたち』あらすじとネタバレ感想|安楽死を求めた子どもたち|冲方丁
- 『十二人の死にたい子どもたち』あらすじと感想文
- 本のタイトルについて
- 登場人物
- 安楽死の理由
- サトシの思惑
少しだけネタバレあります。
12人のはずが1人多い!!
冲方丁さんの小説『十二人の死にたい子どもたち』感想です。本屋さんでフラフラしていたら面白そうだなと思い手に取った本でした。
冲方丁さん初の現代長編ミステリー。
面白かったよ。映画にもなったよね。
『十二人の死にたい子どもたち』あらすじ
テーマは安楽死
廃業になった病院に次々と集まる12人の子どもたち。彼らの目的は、みんなで安楽死をすることだった。しかし、病院のベッドにはすでに1人の少年が横たわっていた・・・。彼は一体何者なのか。
『十二人の死にたい子どもたち』ネタバレ感想文
何の先入観も持たずに読み始めたのだけど、あれ? この展開は・・・。
三谷幸喜さんの『12人の優しい日本人』みたい!
それもそのはず、この本のタイトルは『12人の怒れる男』からきているそうです。
密室劇の金字塔といわれているアメリカのドラマ。そのパロディである三谷幸喜さんの舞台は大好きです。
陪審員裁判のお話で、もう何度見たことか。
それを連想する『十二人の死にたい子どもたち』。密室で繰り広げられる議論が面白い。真相が気になり一気読みしちゃいました。
テーマは「安楽死」です。
目を離せない推理劇
ひとり、探偵役みたいのがいるんですよね。鋭い推理を披露するのは 5番のシンジロウと名乗る少年です。
達観した眼差しのシンジロウ。彼の推理は鋭い。他にも個性的な登場人物たちです。彼らはみんな10代の少年少女。
みんな大人びてた。
『12人の怒れる男』や『12人の優しい日本人』を知っている方は想像がつくかもしれませんが、本書は安楽死を実行するかを多数決で決めていきます。
実行には「全員一致」が原則。
この辺は2作品を連想します。三谷幸喜さんの舞台では、陪審員が有罪か無罪かで決をとり「全員一致」が原則。議論の末、有罪に変わったり無罪に変わったりするのが面白かったです。
安楽死するためのルールは「全員一致」。実行か、議論か。
本書は有罪か無罪・・・ではなくて「実行」か「議論」か。安楽死を望んできた彼らだけど、あるハプニング (?) が起こってしまうのです。
なぞの十三人目の少年
廃業した病院に集まる子どもたち。12人のはずが1人多い!!・・・しかも先に死んでいる!?
少年はどうしてここにいるのか。
自殺、もしかして他殺!?びっくりしました。もしも他殺だったとしたら彼らの中に犯人がいることになりますね。
物語の展開が気になって読むのを止められなかった。
安楽死の理由
前半はシンジロウの鋭い推理がくり広げられます。ワクワクしたけど、心の片隅に引っ掛かっていることがありました。
10代の少年少女が「安楽死」を望む理由です。
本屋さんで『十二人の死にたい子どもたち』を思わず手に取ったのは、その理由に心惹かれたから (・・・というのは後づけなのだけど)。
日本では認められていない安楽死。12人がそれを考えるのは、どういったことからなんだろう。
1番共感できたのはシンジロウでした。よく分からなかったのがアンリです。
でもこの小説はそこに至るまでの理由ではなくて、推理劇に重きを置いているような印象を受けました。
もうちょっと安楽死について掘り下げていたら良かったかな。
「議論」 の末に・・・
「議論」をしていく中で起こる心境の変化が面白かったです。
知らなかった事実が明らかにされていくにつれ、彼らの心境にも変化がでてきました。話し合ってみるものですね。
三谷さんの舞台『12人の優しい日本人』を見たときも同じことを感じたよ。
話し合う前と後とでは、たとえ結果が同じになったとしても全然違う。
何も知らずに出した結果と、深く理解してから出した結果の違いです。同じ結果でも後者の方が良いに決まってますね。
冲方さんの本を読んで、考えることや話し合うこと、理解することが大切だと思った。
『十二人の死にたい子どもたち』サトシの思惑にびっくりしたラスト
結末は予想ができました。12人が実行するのか、しないのか。「議論」した結果、ほとんどの子たちが晴れ晴れしていたのが印象的です。
それよりも管理人のサトシの思惑に少しビックリ。
最初から最後まで不思議な少年だと思っていたのだけど・・・。面白かったです。