- 古川日出男さん(訳)『平家物語』あらすじと感想
- 田舎者の英雄・木曽義仲
- 敦盛の最期
- 知章の最期
- 佐久間智代さんが描く敦盛と知章
激動の時代に生きた3人の男たち
古川日出男さん(訳)『平家物語』感想です。先日は 幼帝・安徳天皇と建礼門院 (けんれいもんいん) のことにふれました。
今回は 前々から好きな人物にスポットをあてました。たくさんいるのですが3人に絞りました。きっかけになった佐久間智代さんの漫画も紹介します。
前回のレビューはこちら。
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『平家物語』あらすじ
そこには さまざまな人間ドラマがある
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
時代は平安末期。平清盛を柱として 栄華を極めた平氏一門。しかし 源氏によって都を追われはじめ・・・。
『平家物語』感想 (2)
源氏から木曽義仲、平氏から平敦盛、平知章をピックアップしました。
田舎者の英雄・木曽義仲

まずは源氏サイドから この方。
木曽義仲 (きそよしなか・源義仲) です。
義仲と義経って経歴が似ているような気がするんですよね。2人とも戦で類まれなる才能を発揮し、最期は頼朝に追われる・・・。
でも義仲の方はあまり知られてないような気がします。(平家物語には大きく取り上げられているのですが)
2人には決定的に違うところがあります。イメージです。義仲は田舎者で、かたや義経は華やかさがある。そのイメージが2人の人気に差がついている理由なのかもしれません。
古川さん(訳)の『平家物語』では、義仲がカッコよく描かれています。(田舎者丸出しのエピソードもありますが) これはとても嬉しくて、読むのが楽しかったです。
倶利伽羅峠の戦い
まず大活躍するのが 倶利伽羅峠の戦いです。平維盛 (たいらのこれもり) 率いる平家側より少ない兵だったのに みごと勝利。義仲の作戦勝ちでした。
わざと戦いを夜まで伸ばして、平家軍が寝静まったときに奇襲をかける。そして谷底へと誘導するんです。頭が良いですね。
ジーンとしました。今井四郎兼平 (いまいしろうかねひら) とのやりとりです。
「なあ今井よい、俺は」と木會殿が言われる。「都で最期を遂げるつもりだった。この義仲はな。当然ながらな。それをここまで逃れてきたのは、今井、お前と同じところで死ぬためにだった。そうなんだぜ。どうだ、別れ別れに討たれるよりも同じところでよう、討ち死にといこうぜ」
『平家物語』は たくさん本が出ています。同じ義仲や義経が登場しても英雄のように描かれていたり、そうでなかったりと様々のようですね。
書き手によっていろんな目線で楽しめるのは面白いです。(義仲や義経が好きなので 彼らが英雄のように描かれていると嬉しいのですが) ここで語られている義仲が好きです。
つづきまして 平家サイドから2人をピックアップしました。
敦盛の最期
平敦盛 (たいらのあつもり)。
有名な人ですね。私が最初にお目にかかったのは学校の教科書でした。
・・・記憶にありませんか? 一ノ谷の戦いで、熊谷次郎直実 (くまがえのじろうなおざね) が敦盛を討とうとしているシーン。
直実は敦盛を馬から組み落とし、首を斬ろうと甲を上げたときに戸惑う。自分の息子と同じ年頃だったから。でも後ろから源氏軍が迫っていて、どのみち助からないのなら、自分が斬ろうと心に決めるんです。それで泣く泣く・・・。
そして笛の名手だった。・・・実は、学校の教科書を読んだ時にはそれほど気になる人物ではありませんでした。私が好きになったのは 佐久間智代さんの漫画を読んでからです。
漫画を紹介する前に、もう1つだけ『平家物語』からエピソードを。同じく佐久間さんの漫画の影響で好きになった平知章です。
「父と子」知章の最期
平知章 (たいらのともあきら) というひとを知っている人は、あまりいないのではないかと思います。
新中納言知盛卿 (平知盛、たいらのとももり) の息子です。父親の方が知れ渡っていますよね、きっと。
『平家物語』に「知章の最期」という項目があって、胸を打たれました。父と子と馬の物語です。(馬は省略します)
父親の前で息子が討たれてしまう。
子を想う父の言葉に胸がはりさけそうになりました。知盛は それでもまだ生きるんですよね。壇ノ浦で入水するまでは。
『平家物語』はカッコイイ英雄もいるけれど、人の弱い部分もたくさん描かれています。
だから共感できるし面白いのかも。
知章の父・知盛は、一見、情けないダメ親父のようにみえます。でも決して否定しているわけではなくて、優しく包み込むように書かれているんです。生き残った父親の心情を思うと切なく、胸が熱くなりました。
・・・知章に注目しているのに父親のお話になってしまいました。
佐久間智代さんが描く 敦盛と知章

前々から源平時代に興味がありました。それを強力にしたのが 佐久間智代さんの漫画です。
敦盛を描いた「月の船、星の林」。知章を描いた「きらめく波の飛沫」。義経を描いた「らせんは時を越えて」。
人物像は佐久間さんの創作。ここで描かれる彼らがとても好きです。古川さんの完全訳を読んでいたら漫画も読みたくなって、実家の本棚をあさって発見!!手元に持ってきました。
『平家物語』は気になる人物が見つかる
800ページ越えの『平家物語』。わかりやすいって言っても、興味がなければしんどいだけで終わってしまいます。古典ならではの言葉づかいの読みにくさもありますし。(「御なになに」とか・・・)
誰にでもオススメというわけではないけれど、興味があれば かなり面白いです。今まで知らなかったけど、この人のこともっと知りたい!・・・と思える人物に きっと出会えるはず。
図書館本だったのでゆっくり読むことは出来ませんでしたが、ひとりひとり調べながら読み直したい気分です。
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建礼門院、安徳天皇についてふれています。

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