『春が来た』あらすじと感想文|つかの間の春「隣の女」向田邦子
- 『春が来た』あらすじと感想文
- 再生を描いた物語
- 女の見栄と器の広い男
- 切ない恋のゆくえ
少しだけネタバレあります。
切ない恋と家族の再生の物語。
向田さんの短編集『隣の女』に収められているひとつ「春が来た」感想です。
ひとりの男によって変わっていく家族の物語。WOWOWドラマ原作小説です。
切ないけど面白かった。
『春が来た』あらすじ
切ないけど心温まる物語
冴えないOL 直子の前に現れた1人の男・風見隆一。彼の存在により、直子を取り巻く家族の生活が変わっていく・・・。切ない恋と家族の再生を描いた珠玉の短編。
『春が来た』ネタバレ感想文
『春が来た』は、家族の再生を描いた物語です。
読みやすかったよ。
再生を描いた物語
恋人ができた直子だけでなく彼女の家族も変わっていくことです。それも良い方向に。
直子は綺麗になり、妹は社交的になり、父は男らしくなり、母は女らしくなる。・・・それも全てひとりの男の影響でした。
人って人と関わることで成長していくんだね。
自分を良く見せたいから見栄もはるけど、そのために頑張ったりもする。元気な人といると自分も元気を貰えるような気もする。
崩壊しかかった家族をみていると微笑ましくなりました。
女の見栄と器の広い男
直子は風見に対して大きな見栄をはっていました。父は広告会社の重役、母はお花の心得がある。本当は違うのに・・・。
その気持ち、理解できなくはないかな。
自分に自信がないのに、魅力的にみせようとするのは誰にでもあることです。大事なのは今のこの瞬間。
すぐにバレてしまう嘘をつくと、後々バレたときに自分が惨めになります。女性の方が見栄ってはるものなのかなと思ったり・・・。
嘘をついても本当になるのならすごいけど、なかなかそうはいかないからね。
直子の嘘はすぐバレてしまうんです。それからも直子と彼女の家族に関わる風見に、器の広さを感じました。
つかの間の春
風見が直子の家にご飯をたべに来るようになって、彼女と彼女の家族に変化がおとずれます。
- 直子→キレイになった
- 母→女になった
- 父→男らしくなった
いいことづくしですね。直子の家に やっと春が来ました!!風見という新しい風が入ったことにより、壊れかけていた家族がまたひとつにまとまっていく。
父は男らしく、母は女らしくなったのには少し笑っちゃった。それまでは何だったんだろう?
でも春は短いもの。直子の春はつかの間だったのです。
甘く切ない恋のゆくえ
恋のゆくえに、あ然としました。これは切ない。
そう書くと展開がわかるけど、破局します。その理由が・・・。
直子にとっては可哀想だけど、つかの間の春をもたらしてくれた彼は素敵な人なんでしょうね。
風見さんのエネルギー、すべて家族にすいとられちゃったのかな。
『春が来た』清々しい結末
彼と別れてから急展開をみせます。元気だった母が他界する・・・。この展開には息を飲みました。
結末は重くなく清々しいもので、最後まで読むと直子が好きになる。
母や風見に対する気づかいに、心が温まったよ。