- 原田マハさんのアート小説『アノニム』感想
- 謎の窃盗集団 「アノニム」
- 世界を変えたアクション・ペインティング
- ジャクソン・ポロック作 「ナンバー・ゼロ」
- 一枚の絵で世界は変わるのか
- 『アノニム』の読みどころ
- アートを通して見えるもの
少しだけネタバレあります
ジャクソン・ポロック〈幻の傑作〉を手に入れろ―
原田マハさんのアート小説『アノニム』感想です。『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』『デトロイト美術館の奇跡』に続き『アノニム』を読みました。
面白かったけど展開がイマイチ。・・・と言いつつも、後半は楽しめました。今回もアートの力を感じずにはいられません。
もくじ
『アノニム』あらすじ・評価
一枚の絵で世界は変わるのか!?
ジャクソン・ポロック幻の傑作「ナンバー・ゼロ」のオークション開催が迫る香港。建築家の真矢美里は7人の仲間とともにオークション会場へ潜入していた。一方、アーティストを夢見る高校生・張英才に“アノニム”と名乗る謎の窃盗団からメッセージが届く。
『アノニム』ネタバレ感想文
『アノニム』はアート小説なんだけど、エンタメのような感じでした。
原田さんのアート小説はアーティストの人生がそのまま物語に織り交ぜて描かれています。今回は、そういう描き方をしていないようですね。
それが、あまりのめり込めなかった理由かも。
謎の窃盗集団 「アノニム」

アノニムって?
タイトルにもなっている 「アノニム」 とは、謎の窃盗集団のことです。
- ジェット
- エポック
- ミリ
- ヤミー
- ネバネス
- オブリージュ
- ネゴ
- オーサム
・・・登場人物、多い。でもイラスト付きで紹介されているのでイメージしやすかったです。それぞれ個性的なキャラが魅力的。
アノニム (anonyme)、英語でいうとunknown。作者不詳という意味です。
盗まれた美術品を取り返してあるべき所に・・・がモットーの彼ら。ルパン三世を連想しました。
ボスのジェットから彼らに指令が下ります。
ジャクソン・ポロック 「ナンバー・ゼロ」 を贋作とすり替えること。
世界を変えたアクション・ペインティングとジャクソン・ポロック 「ナンバー・ゼロ」
原田さんのアート小説の魅力は、絵画に込められた熱い思いを感じられることです。
絵画に疎い私でも。ルソーの 「夢」、ピカソの 「ゲルニカ」、セザンヌの 「マダム・セザンヌ」、そして ジャクソン・ポロックのナンバーシリーズ。
アメリカ抽象表現主義の旗手、ジャクソン・ポロック作 「ナンバー・ゼロ」。
『アノニム』の表紙になっているのは、「ナンバー1A 1948」 です。↓

壁紙のような、よく分からない絵。「アクション・ペインティング」 と言うらしいですね。
カンヴァスを床に置き、その上を動き回って激しく絵の具を垂らし、自分の動きの軌跡をペインティングとして現す。
そんな風に描かれているなんて・・・と、マジマジ表紙を眺めてしまいました。これはスゴイです。
世界で初めて 「アクション・ペインティング」 をしたのがジャクソン・ポロック。彼の中にはいつもピカソがいました。
この物語は 「一枚の絵で世界を変える」 ということについて描かれています。
一枚の絵で世界は変わるのか

彼らの才能が交わるとき、世界は変わるのか?
舞台は香港。窃盗集団 「アノニム」 と、高校生アーティスト・張英才が出会います。
「ナンバー・ゼロ」 で世界を変える!?
何度も表紙の絵を眺めました。原田さんのアート小説を読んでいると、必ずそうしてしまうんですよね。
少し出来すぎた展開になるんです。難読症 (ディスレクシア) が治ってしまうのには、そんな訳ないだろっと、つっこみたくなりました。
それに最後の展開はいただけません。知らずに贋作を書かされた彼はどうなの? これって犯罪じゃん。
他にもある『アノニム』の読みどころ
涙したところがあります。ジェットの過去の回想シーンです。
思わぬところで出会った一枚の絵。たった一枚の絵なのに、思い出やさまざまな感情があふれてくる。
目が離せなくて一気に読んでしまったところ。オークションのシーンがスリルがあって面白かったです。
幻の作品を競り落とすために価格がどんどん上がっていく・・・。情景が浮かんできて、オークションの熱を感じました。
アートを通して見えるもの
アート界を覆したジャクソン・ポロック。そこにはいつも挑戦がありました。
―もしも目の前にドアがあるなら、まずノックしてみろ、と。
この言葉、本当にポロックが言っているような気分になります。
ネットで絵画鑑賞しました。ポロックの絵はどれもが躍動的。それでいて緻密に計算されているのが感じられます。
あまりハマれなかった『アノニム』だけど、彼の絵に出会うことができたことが1番良かったです。


