『沈黙法廷』あらすじ・ネタバレ感想文|彼女は淑女か悪女か―。真実と裁判の結末|佐々木譲

- 『沈黙法廷』あらすじと感想文
- 被告の人生
- 迷走する警察捜査
- 首都圏連続不審死事件を連想
- 沈黙する被告と真意
- 彼女は有罪か無罪か
少しだけネタバレあります。
彼女は白か黒か―。
佐々木譲さんの小説『沈黙法廷』感想です。法廷小説。WOWOWにてドラマ化されました。主演は永作博美さんです。

これまで佐々木譲さんの小説を映像化して良かった試しがないんだよね・・・。
原作とはかなり違っていたりして残念な感じなのが多いんです。今回はWOWOWとのことなので大丈夫かな? 見てないのだけど。
『沈黙法廷』あらすじ
沈黙の理由とは―。
家事代行業の女・山本美紀の周りで続く複数の不審死。警察は彼女を追うが・・・。果たして彼女は白か黒か? 全ては公判で明かされる。
『沈黙法廷』ネタバレ感想文
『沈黙法廷』は裁判に重きを置いた小説になっています。

本当の裁判を傍聴しているような臨場感が味わえる!!
警察の捜査と裁判での証言がところどころ被っていたのには、うーん・・・と思ったけど、展開が面白かったです。
法廷で明かされる被告の人生

法廷って人の人生が全て暴かれるところなんですよね。
裁かれている被告の人柄、過去の生い立ち、そして犯しているかもしれない罪が検察官によって晒されるのには背筋が伸びました。
ここで罪に問われているのは、家事代行業の女・山本美紀です。
東京・赤羽で起きた初老男性の殺人容疑。検察官の奥野豪の訴えを聞くと、被告人怪しい・・・となり、弁護士である谷田部完の弁護を聞くとまた分からなくなる。
彼女は黒か、白か―。
後半の裁判の場面が一番の読みどころです。けれど彼女の過去や人生が明らかにされるにつれて胸が重たくなってきました。
こういう雰囲気も上手いですね。警察小説とはまた違った面白さがある。

読みながら緊迫感が味わえたよ。
迷走する警察捜査
前半は捜査の過程や容疑者を絞り込み逮捕までの過程が警官目線で描かれていました。
主に赤羽署・伊室刑事の目線で。そして浮かぶ、ひとりの容疑者。被害者宅に出入りしていた家事代行業の女・山本美紀です。
埼玉県警でも過去の事案に彼女が関わっているかもしれないとの線が濃厚になってきて・・・。警視庁と埼玉県警が競うように捜査を進めていく過程に不快感を抱きました。

大丈夫か、警察・・・。
体裁を保つために起訴してしまうんです。彼女が犯人だと確たる証拠もないのに・・・。迷走する警察捜査が描かれていました。
結局、埼玉県警が逮捕した彼女は不起訴。次は赤羽で起きた老人殺害の犯人として、警視庁が彼女を逮捕します。

2つの事案に彼女は関わっているの?裁判の行方が気になる。
首都圏連続不審死事件を思わせる展開

この物語は、高見沢弘志が恋人・中川綾子とフェリー乗り場で待ち合わせしている場面から始まります。

でも彼女は来ない・・・。姿を消してしまうんだ。
プロローグのようなこの数ページが、今後どう関わってくるのか気になりました。
中川綾子という幽霊のような女性。そして起訴された山本美紀が関わっているとされている事件を読んでいくと、過去に起きた首都圏連続不審死事件が思い浮かびます。

『沈黙法廷』は、あの事件を参考に描いたみたい。
本書にも何度か「首都圏連続不審死事件」という言葉がでてきて、そう言えばと連想しました。
沈黙する被告、その真意は・・・
注目の法廷シーンは、高見沢弘志の視点で描かれています。傍聴人目線として。
リアルに裁判を傍聴している気になりました。判決が出るまではドキドキです。
山本美紀が黙秘するシーンがあるのだけど、何を聞いても黙秘・・・。彼女の心境に何があったのか?
沈黙を貫く彼女が守りたかったもの。それは・・・。

ドキドキの展開だったよ。
『沈黙法廷』彼女は有罪か無罪か
彼女は有罪か無罪か。
最後まで目が離せません。結末も気になることながら、検察官と弁護士のやりとりに凄まじさを感じました。

人生が丸裸にされてしまう裁判って恐ろしい。法廷には立ちたくないものだ。


