- 知念実希人さんの小説『崩れる脳を抱きしめて』あらすじと感想文
- 頭の中に埋まっている爆弾
- 恋のゆくえ
- 愛した彼女は幻?
- 患者が望む医療
- 結末について
少しだけネタバレあります。
愛した女はマボロシなのか?
知念実希人さんの小説『崩れる脳を抱きしめて』感想です。初めてKindle版で読みました。なかなか読みやすいものですね。
『崩れる脳を抱きしめて』あらすじ・評価
究極の恋愛×ミステリー!!
病院に勤務する研修医の碓氷は 脳腫瘍の患者・ユカリの担当になる。外の世界に怯える彼女と、過去にトラウマを抱える主人公。2人は心を通わせていく。ある日、彼の元にユカリの死の知らせが届いた―。
『崩れる脳を抱きしめて』ネタバレ感想文
面白かったです。初めはキャラに馴染めなくて、うーん・・・と思ったけど、途中から気にならなくなりました。読みやすいですね。泣けました。
目次はこんな感じ。
- プロローグ
- 第一章 ダイヤの鳥籠から羽ばたいて
- 第二章 彼女の幻影を追いかけて
- エピローグ
大きくわけて2章からなっています。終末期医療、恋、ミステリー、結末はどんでん返し・・・と盛りだくさん。
良い結末だったけど、切なさの余韻を残したまま終わっても良かったのではと感じました。それについては後ほど・・・。
それにしても『崩れる脳を抱きしめて』というタイトル、この本にピッタリですね。
頭の中に埋まっている爆弾

主人公は碓氷蒼馬、『葉山の岬病院』に研修医としてやってきました。
彼が出会う彼女、名前を弓狩環(ゆがりたまき)といいます。みんなからユカリさんと呼ばれている彼女は、ホスピスに入院している患者さんでした。
グリオブラストーマ、膠芽腫・・・というのが彼女の病名。脳腫瘍です。
彼女は弱音をはかず、どこか達観した感じのキャラなんです。住野よるさん『君の膵臓をたべたい』を思い出しました。あれ、好きな人はきっと本書も好きなんじゃないかな。

『君の膵臓をたべたい』、私はダメだったけど、知念さんの『崩れる脳を抱きしめて』は面白く読めました。
ウスイ先生とユカリさんを見ていると、心が温まります。彼は彼女に恋をする。キュンとしますね。
恋のゆくえ
主人公の彼が恋した相手は、頭の中に爆弾を抱えた彼女です。
彼らが心を通わせていく描写は、ほんのりしました。心が温まりながらも切なさが増します。彼女の余命は残り僅かだから。・・・どうしてもその事が頭をよぎりました。
実習を終えて広島に帰った碓氷先生に、ユカリさんの死の知らせが届く―。
愛した彼女は幻?

メインは恋物語だけど、ミステリー要素もふんだんに描かれていました。
ユカリさんが亡くなったのは病院ではなかったのです・・・。不思議に思った彼は真相を探るために病院を再び訪れ、思いもよらないことを聞かされる。
「君は一度も弓狩環さんを診察していない。全部、君の妄想なんだよ」
あ然としてしまいました。ユカリさんは幻? まさかぁ。じゃあ、私は彼の妄想を読んで泣いたの? ・・・と、一瞬で涙がひっこんでしまいました。
どんでん返し的なものがラストにありました。・・・うーん、、、そうきたか。
患者が望む医療
作家の知念実希人さんはお医者さまなのですね。リアル感のある医療現場が描かれていました。
グッときたところは、患者のハナさんの急変シーンです。
ウスイ先生は必死でハナさんを救おうとするけど・・・。その後の院長先生の言葉が心に染みました。
医学と医療は似て非なるものだ。医学的に正しい治療でも、患者にとっては望ましくないということは少なくない
ハナさんが望んでいたこと。それを踏まえての医療なんですね。・・・前に読んだ夏川草介さん『神様のカルテ』でも感じたことです。

誰にでも全ての治療を施せば良い、というわけではなくて。患者さんひとりひとり望むことがあって、それを叶えてあげるのが本当の医療。
現役のお医者さまが描く医療小説を、これまで何冊か読んできました。
夏川草介さん、帚木蓬生さん、そして『崩れる脳を抱きしめて』の著者、知念実希人さん。
必ずグッとくる描写があって読み応えがありました。医師ならではの小説です。
全てがひっくり返る衝撃の結末
結末はハッピーエンドでした。この結末はこれで良い気がするけど・・・。読後感も良いし、ホッともするし、あー良かったねーとも思ったし。でも、しっくりこない。唐突な感じがしました。
1番最後のどんでん返し、いらなくね?(ラスト20ページ)
切なさの余韻を残しつつ終わるラストの方が良かったのではないかと・・・。まぁ、面白かったので読んで損はない小説です。泣きながら一気に読みました。

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