『悪いものが、来ませんように』あらすじ・ネタバレ感想文|歪んだ愛のかたち|芦沢央
- 『悪いものが、来ませんように』あらすじと感想文
- 登場人物について
- 紗英のコンプレックス
- 一卵性母娘の歪んだ愛のかたち
- 母親の気持ち
少しだけネタバレあります。
ラスト25ページの衝撃!!
芦沢央さんの小説『悪いものが、来ませんように』あらすじと感想です。
イヤミス&ミステリー小説。
初めて読んだ作家さんでした。湊かなえさんを思わせる書き方ですね。これは評価が割れるのではないかな。男性よりも女性の方が共感できるかもしれません。
ラストはどんでん返しだったよ。
『悪いものが、来ませんように』あらすじ
気持ち悪さ100%のイヤミス
不妊の悩みを抱える紗英と子育てをしている奈津子。彼女たちの共依存のような関係は 徐々にエスカレートしていき・・・。
『悪いものが、来ませんように』感想
私が読んだのは文庫版で、帯に書かれていたことばに首を傾げてしまいました。
衝撃のラスト25ページ。絶対、ぜったい だまされて、読み返します!
衝撃のラスト25ページとはエピローグのことですかね。・・・うーん、だとしたら衝撃ではなかったかな。犯人は薄々分かっていたし。
それよりも登場人物の関係性のところにビックリ。これは想像できなかった。
どんでん返し的なものがあることは帯を読んだ時点でわかっていたので、騙されないぞ!と注意深く読んでいました。
けっきょく騙されたのだけど。
読んだ感想をひとことで言うと、ただただ気持ち悪い!!です。何が気持ち悪いのかと言うと登場人物たちなんですよね。
誰一人として好きになれない登場人物
登場人物たちが気持ち悪い。
誰一人として好きになれませんでした。だから騙されたと分かっても、もう一度読もうとは思わず・・・。
歪んだ愛のかたち。こういう関係性って現代にも通じるものがあるかも。
紗英と奈津子の2人が主人公のような感じでした。気持ち悪いと感じたのは彼女たちの関係です。まるで共依存。
主人公の2人(特に紗英の方)がコンプレックスの塊のような人で、ぜんぜん共感できませんでした。
紗英のコンプレックス
コンプレックスなら誰にでもあると思うのだけど、紗英の考え方にはイライラしました。
妹と比べて自分を不必要なまでに下に見ている。いったいどういう環境にあればこういう考え方になるのか、と・・・。
最後まで読めば、彼女がこうなってしまったのは頷けるものがあるんだけどね。
なっちゃん(奈津子)に依存する紗英を見ていると気持ち悪さを感じてしまう。
赤ちゃんが欲しいのになかなかできなくて。不妊に悩むのはわかるけど・・・。それなのに浮気をしている夫の大志にも腹が立ちます。
夫が殺された!? 犯人は・・・?
紗英の夫である大志が殺されました。
犯人は逮捕されるのだけど、最後のエピローグでどんでん返し的なものがあります。ミステリーを読みなれた人だったら薄々わかってしまう展開でした。
そこまでの衝撃はなかったよ。
『悪いものが、来ませんように』は紗英と奈津子の視点、そして彼女たちのまわりの人たちの証言で構成されています。
湊かなえさんや、真梨幸子さんの作風を連想しました。
読み手は、いろんな人の証言でその人がどんな人なのかを想像していく楽しさがあるのだけど・・・。こういう書き方、どうも好きになれないんですよね。
一人称視点は少し読みにくかった。
一卵性母娘の歪んだ愛のかたち
小説のテーマは一卵性母娘です。「友だち親子」とか言われるように 友だちのような親子のこと。
現代には多いのかもしれません。はたから見たら仲が良くて楽しそうで羨ましい気もするけど、疑問を感じました。・・・特に本書を読んだあとでは。
母になりきれない母親。母親から卒業できない娘。
厳しめな言い方をするなら、本書の言葉を借りてこんな感じかな。
紗英は小さいときから母の顔色を伺い、母親もそんな彼女をひとり立ちさせられない依存状態の関係。
そんな家庭環境で育った彼女は妹に極端なコンプレックスを抱き、いつまでもひとり立ちできない大人になってしまいます。
そして、なっちゃんに依存する。なっちゃんもなっちゃんで彼女に依存状態です。梨里を育てながらも紗英から離れられない。
ゆがんでる・・・。
母親の気持ち
この本のタイトルは好きです。母の子どもに対する愛情がうかがえました。
自分の子どもに 悪いものが、来ませんように。
そう願うのは、母だったらだれもが一緒だよね。
いまいち物語に入りこめなかったけど、タイトルの意味に気づいたとき、ほんのりと心が温まりました。