- 『罪人が祈るとき』あらすじと感想文
- テーマは 「いじめ」と「復讐」
- いじめの爪あと
- 時田少年とペニーの殺人計画
- 本当の罪人
- 復讐について
少しだけネタバレあります。
―本当の罪人は誰?
小林由香さんの小説『罪人が祈るとき』感想文です。小林さんの本を読むのは2冊目。前作デビュー作の『ジャッジメント』が衝撃で、こちらも期待しながら読みました。
もくじ
『罪人が祈るとき』あらすじ
さいごは涙腺崩壊!!
子どもを亡くした父親と自殺を決意した少年―。同じ空を見上げたとき 2人はなにを祈るのか。涙なくしては読めない感動のラスト! 衝撃のデビュー作『ジャッジメント』に続く長編ミステリー。
テーマは 「いじめ」 と 「復讐」
テーマは 「いじめ」 と 「復讐」 です。
壮絶ないじめを受け、耐えきれなくなり自殺した息子の家族。いじめで苦しむ子どもたちが描かれています。その果てに行き着くのは復讐・・・。重く切ない物語ですが、心が揺さぶられました。
重要な登場人物は3人。
- 自殺を決意した少年・時田祥平
- 息子を自殺で亡くした父親・風見啓介
- ピエロ・ペニー
彼らが出会うとき 新たな復讐が始まるのです。
『罪人が祈るとき』ネタバレ感想文
切ないです。ずっと泣きっぱなしで一気に読み終わりました。面白いという言葉が適切かどうか分かりませんがハマりますね。
好き嫌いは別れるかもしれませんが『ジャッジメント』に続き本作『罪人が祈るとき』も傑作! 正論では割り切れない思いがあとを引きました。
いじめの爪あと

いじめは不幸の連鎖
風見啓介は 息子をいじめによる自殺で亡くしました。遺書を読んで妻と一緒に首謀者を探し回るのですが、その描写が切なかったです。
父親として息子を救ってあげられなかったこと。
自分を責め続ける啓介が痛々しくて涙が溢れました。いじめを受けて自殺した本人も辛いけど、後に残された家族も辛い。
耐えきれなくなった妻も自殺をしてしまいます。一家は崩壊。その爪あとは壮絶。
重松清さん『十字架』を連想しました。

いじめた側もその代償は重い。『十字架』ではイジメを傍観していたことで背負わなければならない罪が描かれていました。
『罪人が祈るとき』とは趣が違いますが、共通していることがあります。不幸の連鎖です。
イジメというと本人と加害者の問題とされがちですが、その余波は周りにも広がっていく。ここで描かれている風見一家のように。息子が自殺、妻も自殺、そして啓介は・・・。
時田少年とペニーの殺人計画

壮絶ないじめを受けていた時田の前に現れた謎のピエロ・ペニー。彼は時田に言います。いじめの首謀者・竜二を殺してあげると。
殺人計画なんて物騒なことを話していますが、ペニーの明るさや持ち前のパントマイムで少年の心がほぐされていきます。キャッキャッと笑うペニーが可愛い。
後半でペニーの正体が明らかになりました。・・・この辺りは意外性はなくて、やっぱりあの人だったかと思いましたが 切なくなります。
顔は笑ってるのに なぜ涙マーク? 前にその意味を調べたことがあります。
ピエロは 実は哀しみを抱いているという意味で涙マークとか。
仮面の下はいつもシリアス。みんなを笑わそうとして必死なんです。ここで描かれているペニーも・・・。そう思うと更に切なくなりました。
本当の罪人はだれ?
小林由香さんのデビュー作『ジャッジメント』では、復讐が肯定された世界を描いてました。『罪人が祈るとき』も雰囲気がどこかデビュー作に繋がっているような印象を受けます。
もちろん理性では いけないことだと分かっていますが、割り切れない気持ちが残ります。本書のことばが胸に刺さりました。
―本当の罪人は誰ですか?
復讐殺人を果たしたペニー? それとも いじめを繰り返し自殺に追い込んでも罪に問われない彼ら?
過ちを犯した少年、みんながみんな更生するとは限らない。復讐を肯定してしまう自分がいました。
復讐を否定できるか?
小林由香さんの本、前作も衝撃だったけどこっちもまた衝撃作ですね。
復讐を否定できますか?
そんな作者の声が聞こえてきそうです。
復讐することで助かる命がある。そう考えたときに心が揺らいでしまう。もちろんどんな理由があろうとも殺人はいけませんが、正論だけでは割り切れないものが確かにあるんです。
罪人の祈りに涙腺崩壊!!
ほんとに涙腺が壊れてしまったかと思うほど泣きました。ラストがまた良かった。『罪人が祈るとき』のタイトルを実感した瞬間・・・。
時田少年と父親の関係はギクシャクしたまま終わってしまったので、それが少し心残りでしたが 良い本を読みました。


