『カラスの親指』あらすじ・ネタバレ感想文|タイトルの意味に驚愕!華麗な詐欺師たち|道尾秀介
- 『カラスの親指』あらすじと感想文
- 華麗な詐欺師たち
- 詐欺とマジックの違い
- アルバトロス作戦
- テツさんの思い
- タイトルの意味と結末
ネタバレあります。ご注意ください。
カラスの親指は誰か?
道尾秀介さんの小説『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』感想です。詐欺師のお話だけあって、騙され感が半端ない。何度読んでも面白いです。
映画にもなってるよね。
小説を読んだ後で阿部寛さん主演の映画も見ました。小説も映画もテツさんが好きです。
『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』あらすじ・登場人物
ペテン、ペテンの連続!
詐欺を生業として生きる中年男2人組。ある日、彼らの生活に1人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは?息もつかせぬ驚愕の逆転劇と感動の結末。第62回日本推理作家協会賞受賞作。
『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』ネタバレ感想文|ペテンか爽快!
爽快でした。ペテンを仕掛ける方が実は騙されていた・・・。スピーディな頭脳戦と思いきや、人情あふれた家族ドラマのような物語です。
タケさん、テツさん、やひろにまひろ、貫太郎・・・。みんな素敵なキャラでした。
この中にタイトル 「カラスの親指」 が指している人物がいます。道尾さんの小説はタイトルに深い意味があるものが多いんですよね。
意味がわかったときの衝撃がクセになるよ。
華麗な詐欺師たちと 「他人家族」
『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』は詐欺師のお話です。
主人公・タケさんとテツさんは詐欺師、まひろはスリで生計をたてていました。
悪いことをしているのに、登場人物に魅力を感じるんですよね。どのキャラも個性的で人間味がありました。
詐欺の手口が華麗なんだ。
ひょんなことから、タケさん、テツさん、まひろ、やひろ、やひろの彼氏 (貫太郎)、紛れ込んだ猫 (トサカ) が一緒に暮らし始めることに・・・。5人と1匹は、他人だけど本当の家族みたいでした。
指の話が印象に残っています。
タケさんがお母さん指なのは笑ってしまったけど、お父さん指にテツさんなのは、最後まで読むと納得でした。
詐欺とマジックの違い
やひろの彼氏・貫太郎はマジシャンです。彼が言う、理想的な詐欺とマジシャンの違いが新鮮でした。
詐欺は相手が騙されたことに気づかないのが理想的。マジックは相手が騙されたことを自覚できなければ意味がない。
人を騙すのは一緒だけど、詐欺とマジックは似ていてまったく反対なんだね。
道尾秀介さんの小説は、こういう小話が面白くて好きです。
例えば『笑うハーレキン』で書かれていた道化師とピエロの違い。道化師の顔に涙マークを描くとピエロになるという小話が書かれていました。
『staph スタフ』で書かれていた乳酸菌のおにぎりの話。手で握ったおにぎりは時間が経つと乳酸菌で美味しくなるそうです。
ちょっとしたウンチク(雑学)的な小話が面白いのも道尾さんの小説の魅力です。
アルバトロス作戦
タケさんもテツさんも、やひろもまひろも、みんな残酷な過去を背負って生きていました。もう逃げたくない彼らは「アルバトロス作戦」を決行します。
アルバトロスとはアホウドリのこと。日本ではアホウドリと呼ばれているけど、海外では格好いい鳥のようですね。
貫太郎が良い味だしてたよ。
騙すことが本業の彼らはヤミ金組織相手に暴力では勝てないけど、頭脳戦なら・・・。
騙す側と騙される側。誰が騙していたのか、最後の最後にひっくり返るのが面白かったです。
テツさんの思い
テツさんの思いに胸を打たれました。
家族もいない。仲間もいない。何もない。だから、せめて死ぬ前に、あの世に持っていけるような思い出が欲しかったんですよ
自分が詐欺師であったことを後悔していたテツさん。最後に願いが叶って良かったです。
自分の人生の終わりが見えたとき、過去を振り返りたくなるかもしれないね。
みんな残酷な過去を吹っ切れました。・・・素敵な思い出になったんじゃないかな。
『カラスの親指』タイトルの意味と結末|カラスの親指はだれ?
『カラスの親指』は、テツさんを指しています。
カラスというのは玄人のこと。カラスが黒いからそう言うようですね。ここでは玄人の詐欺師を指しています。
親指はそのまま父親の意味で、テツさんは、やひろとまひろの本当の父親だったのです。・・・親指にはもう一つ意味がありました。
親指だけが、正面からほかの指を見ることができるんです。ぜんぶの指の中で、親指だけが、ほかの指たちの顔を知ってるんですよ
思わず自分の手を見つめます。確かに正面に向かい合わせになるのは親指だけですね。
テツさんは全てを知っていました。
- タケさんがかつてヤミ金組織で、やひろとまひろの母の取り立てをやっていたこと
- その罪滅ぼしで彼女たちにお金を送っていたこと
- ヤミ金組織から逃げるように暮らしていたこと
知っていて、彼らが出会うように仕向けたんだね。
みんなテツさんの手のひらの上でコロコロ転がされていたわけです。
二重、三重のペテン。騙され感が半端ないけど結末は感動します。読了感は爽快でした。