『殺戮の狂詩曲(ラプソディ)』ネタバレ感想文・あらすじ|御子柴礼司シリーズ6|中山七里
- 『殺戮の狂詩曲』あらすじと感想文
- 令和最悪の凶悪犯・忍野の犯行動機
- 無罪を主張する御子柴弁護士
- 御子柴弁護士の信念
- いつもと違う結末&弁護を引き受けた理由
ネタバレあります。ご注意ください。
御子柴礼司シリーズ6
中山七里さんの小説『殺戮の狂詩曲(ラプソディ)』読書感想です。悪辣弁護士・御子柴礼司シリーズ第6弾。今回も期待を裏切らず、面白かったです。
令和最悪の凶悪殺人事件の犯人を御子柴礼司が弁護!?
好きなんだよね、このシリーズ。欠かさず読んでる。
『殺戮の狂詩曲』あらすじ
御子柴礼司シリーズ6
高級老人ホームで発生した、令和最悪の凶悪殺人事件。好人物を装っていた介護職員の心中に渦巻く邪悪。最低な被疑者への弁護を名乗り出た悪評塗れの弁護士・御子柴礼司が、胸に秘める驚愕の企みとは?
『殺戮の狂詩曲』ネタバレ感想文|令和最悪の凶悪犯を御子柴が弁護!?
悪辣弁護士・御子柴礼司シリーズ6、今回も面白かったです。御子柴弁護士が担当したのは、令和最悪の凶悪犯・・・。
2つのことが気になり、一気読みでした。
一番気になったのは、弁護を引き受けた理由なんだ。
弁護を引き受けたのは、それ相応の理由があるんじゃないか。これまでのシリーズを読んでいれば推察できるのだけど、たぶん御子柴と繋がりがある人物だからじゃないかと・・・。
中山七里さんは、読者が疑問に思うことや伏線をしっかり回収してくれる作家さんです。
絶対最後には明かされるとわかってるから、安心して読めるんだよね。
令和最悪の凶悪犯・忍野の危険な思想(犯行動機)
高級老人ホーム〈幸朗園〉で9人もの入所者を殺害し、逮捕された介護士・忍野忠泰。彼の思想(犯行動機)が受け入れがたいものでした。
あの人たちは生きていたって何の価値もないんですよ
生産性がなく、社会の役に立たないから・・・というのが犯人の思想で犯行の動機です。入所者や老人ホームに恨みはなく、止めなければ入所者39人全員を葬る計画でした。
なんでこんな思想を持っちゃったんだろ・・・。
子どもの精神のまま大人になったという印象です。逮捕されたときも、御子柴弁護士との謁見のときも全く悪びれたところがなくて不気味でした。
検察側の求刑は死刑。
まぁ、これは当然だろうね。
令和最悪の凶悪犯・忍野の弁護にあたる御子柴礼司。彼の主張は・・・。
御子柴は無罪を主張!?|殺意の不在をめぐる裁判
検察の求刑「死刑」に対し、弁護士の主張は「無罪」。
御子柴弁護士は「殺意の不在」を証明するとしていました。刑法第39条(責任能力の有り無し)を争うのではなく、責任能力があるとした上での「殺意の不在」です。
犯人に責任能力はあるし、凄惨な犯行描写を読んだ身としては・・・。
これはさすがに「無罪」はムリ(というか、心情的にあり得ない)だろうと思いながら読んでいました。しかも忍野の取り調べを読む限り、明確な殺意があったと感じたのです。
御子柴弁護士は、なぜ忍野の無罪を主張するのか。・・・続きが気になりますよね?
彼が注目したのは忍野の思想でした。
「改めて訊くが、君の思想は君のオリジナルなのか」
誰かの思想を受けて忍野が事件を起こしたということ?・・・だとしても無罪になるかな。
信念を曲げない御子柴が頼もしい
令和最悪の凶悪犯を弁護することで、世間の反感を買うかもしれない御子柴。彼が事務員の洋子に言った言葉が素敵でした。
たとえ全世界を敵に回しても、弁護人だけは被告人の側に立つ。それが弁護士としての存在理由だ
前作『復讐の協奏曲(コンチェルト)』で、最後まで洋子の弁護についたのは御子柴です。
洋子にとって、彼の言葉は心に刺さっただろうね。自分の信念を曲げない御子柴が頼もしく見えたよ。
洋子以外にも、弁護を反対する人々がたくさんいて目を引きました。谷崎法律事務所のボス・谷崎完吾や、宏龍会渉外委員長・山崎岳海まで・・・。
「悪名にも限度ってものがある。先生は全国民を敵に回すつもりですか」
宏龍会の山崎が心配するなんて珍しい。でも山崎の言葉は的を得てる気がした。
御子柴礼司シリーズでもちょこちょこ登場する宏龍会・山崎岳海は、中山七里さんの他の小説でもリンクしてるキャラです。『ヒートアップ』に登場してるので、ぜひ。
『殺戮の狂詩曲』いつもと違う結末&御子柴が弁護を引き受けた理由
最後は御子柴が弁護を引き受けた理由(私が一番気になってたこと)が明かされました。
忍野は磯崎来也に繋がりがある人物だった。
だから自ら弁護を引き受けたのですね。・・・こういう繋がりも楽しめるから、御子柴礼司シリーズは出版順に読むのが良いかも。
磯崎来也は御子柴の少年院時代の親友。過去作に、御子柴と来也の少年院時代のことが描かれていたよ。
もうひとつ気になっていたのが、裁判のゆくえです。
結末(裁判の判決)は、いつもと違う展開になりました。
それもそうだよね・・・と、こちらも納得。
裁判で事件の様相がひっくり返るのは、いつもながら面白かったです。事前に申請せずに、裁判で何食わぬ顔して新たな証拠を提出する御子柴の狸っぷり(図太さ)とか・・・。
裁判も読み応えがあった。このシリーズは本当に面白いからおすすめ。